誘惑


 それは俺の気のせいだったかも知れない。
 それでもその時は、自分からしたかったから、後悔はしてないと思う。

 いつも下から見上げていた舜さんの上に跨がって、下手くそなりにキスをする。
 もう何度目になるかも分からないキスに、俺はすっかり嵌まっていた。

 舜さんのキスは俺の動揺も疑問も、一切を解かして、すっかり俺を手懐けた。

 多分そのせいだろう。
 いつまでもされる一方、っていうのが、気になってた。

 舜さんに押し返されないように、ベッドに貼り付くつもりで身体を舜さんにくっ付けた。
 舜さんの掌を探って、やや強引に指を絡ませる。

 舜さんの息遣いから、動揺しているのは何となく読み取れた。
 でもやっぱりこの唇が気持ちよくて、何より今日は俺が、この人を攻めることに、もう理性は追い付かない。

 しゅんさん、と唇から離れて、舜さんの首筋にキスをしていく。
 どくどく脈打つ音に、艶かしさを覚えた。

 舜さんはそれでも、ちょっとだけ俺を押し返そうとしていたようだけど、首筋は弱いのか、舌を這わせると大人しくなった。

「……陸、まって」

 ぞくぞくしているのか、舜さんの声が震えている。
 力が抜け掛かっている舜さんの手を掴む自分の指に、再度力を込めた。

「ここ、ですか?」

 軽い力で甘く噛み付く。
 んん、と高めの声で舜さんが啼いた。

 ……っ。

「舜さん、エロ過ぎません?」

 両手の指を一本ずつ丁寧に絡ませて、俺は舜さんを見下ろして言った。
 舜さん、もう表情が蕩けてて、でも何となく不服そうな目付きで俺を見返している。

 何て言うんだろうか……そんなことをされると、逆に退けなくなる。

「ばか……いいから、退け、って」

 ぐ、と俺の手を押し返そうとする舜さん。
 嫌です、とはっきり返して、俺は脚を動かした。

 太ももで舜さんのソレを擦り上げる。
 もう固くなってるの、知ってるんで。

 びく、と反応して、手に入っていた力が抜けた舜さん。
 俺は念のため手は繋いだまま、顔で舜さんの胸元をまさぐる。

 おい、とまだ抵抗を続ける舜さん。
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