馴らし
「いいから力抜いてろ」
そんなことを言われたって、まだ混乱している状態では、身の委ねようもない。
そんな、自分でしか弄ったことのないところを、許可なく触られて、どうして力を抜くことが出来るっての……。
多分抵抗しようという意思は持ってた。
でも、油断してたのも事実だし、ここで生活を始めて慣れて来たところだったし、寝てたし。
まさか同じ男に夜這いされるとか、想像しないじゃん。
でも実際、今俺の上には舜(しゅん)さんがいて、考える隙を与えないかのように攻めて来る。
「ねぇ、ちょっ」
有無を言わさずこの状況を受け入れろ、と言った後、そのまま舜さんは俺の耳を舐めてた。
そんなことされるの勿論初めてだったし、どっちかっつーと俺がするもんだと思ってた行為だから、その感触に戸惑いを隠せない。
ゾワゾワする。
絡み付く吐息と、不快な湿った音。
舜さんの熱を持った舌先が俺の平静さを侵して来る。
さっきから舜さんの右手は、俺の腰回りをずっと撫で続けていた。
馴らすような、タイミングを窺っているような手付きだった。
掌全体で太ももから腹部まで撫で上げたと思ったら、指の腹だけで鼠径部をなぞる。
次第にそれが快感になりつつあって、それが舜さんの狙いだとは分かっていたんだけど。
「っん、ゃだ……」
耳から離れた舜さんの唇が俺の目蓋に落ちる。
目を合わせるように俺の顔を覗き込んで来た舜さんに、俺は精一杯の力で、そう訴える。
でも、舜さんは何も答えず、俺の腰回りを撫でていた右手をゆっくりと持ってくると、そのまま、俺の唇に指を掛けた。
「んぅっ」
中指と、人差し指を、俺の口の中へ突っ込む。
反射的に拒否しようと口を閉じてしまったんだけど、そのせいもあってか、舜さんの指は俺の口腔内を満遍なく侵す。
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