土曜のお昼


「どうしたの、にーちゃん?」

 思わず顔を見た瞬間、そう訊いてしまった。
 だって今まで見たことないくらい、顔色が悪かったんだもん。

 最初は風邪でも引いちゃったのかなと思ったんだけど、にーちゃん曰く「寝起き」だって。

 寝起き、と首を傾げる。
 だってもうお昼だよ。

 俺がそう言うと、にーちゃんは俺を部屋の中へ上げながら答える。

「んー、今日仕事上がったの夜中の2時過ぎでさ。そっから帰宅してそのまんま寝てたんだわ」

 だそうだ。

 そうなの、と俺は目をぱちくりさせて呟く。
 そう言われると、確かににーちゃんはくしゃくしゃのワイシャツを着てたし、カバンも無造作に床に投げられてた。

「お仕事ってそんなに大変なの……?」

 あのいつもカッコいいにーちゃんがこんなヨレヨレになるほどなのか、と俺は一種の衝撃を受けていた。
 思わず震える声でにーちゃんに訊いていた。

 するとにーちゃん、ふへ、と何か怖い笑みを浮かべ、上の空って感じで答える。

「お前もいずれ分かるよ……」

 それは何て言うか、ただの脅しだと思った。

「えーっと、どしたの今日?」

 ふらふらとおぼつかない足取りで冷蔵庫へ向かうにーちゃんに、俺は心配になりながら返す。

「昼飯もらいに来た」
「……あ~、今日土曜か……」

 そっかそっか、とにーちゃんは頷いている。
 でも、今日はこんなわけで、昼飯の準備は出来てないんだって。
 にーちゃんはそう俺に謝りながら、いつものようにブドウジュースを出してくれた。

「いいよ、じゃあ今から俺、にーちゃんの分もコンビニで買って来るよ!」

 流石にこんなへろへろなにーちゃんに昼飯を作ってもらうのは忍びない。
 俺がそう切り出すと、あーそうだな、とにーちゃんも同意してくれた。
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