弱音は気遣いに紛れて
「で、ここはこうだと思うんだけど……」
資料集を左手で押さえつつ、俺は自分の出した推測を語る。
しかし、そこでようやく気付いたことがあった。
確認も兼ねて、しっかりと隣を見る。
浮かない面持ちの魅耶が、小さな声で「そうですね」と呟いたところだった。
「……どした魅耶? 調子悪い?」
そう、さっきから抱いていた違和感。
魅耶の反応が薄いのだ。
薄いという言い方は適切ではないかも知れない。
けれどいつものように相槌の種類も多彩ではないし、頷いたりする動きも控え目なんだ。
そんな俺の問い掛けに、あー、と魅耶は怪訝そうな声を出した。
それから少しの沈黙の後、白状する。
「……実は、お昼過ぎから頭痛が続いてまして」
ちょっとずつ酷くなってる感じです、と魅耶は言う。
お昼、と俺は繰り返して、時計を見る。
15時を回っている。
「え、何で黙ってたの?」
責めるつもりは微塵もなかったのだけど、つい、語尾強めにそう訊ねてしまう。
つうか俺がここ来たのがお昼も済んだ13時前よ?
じゃあ俺が魅耶の部屋お邪魔したとき、もう調子悪かったってこと?
「済みません……何とかなると思って」
覇気のない声で魅耶が謝った。
流石にこんなつらそうな表情の魅耶に謝られると良心が痛むどころか抉られるわ。
ごめん、と咄嗟に意味もなくそんな言葉が出た。
でもその後で、改めてこちらからも謝る。
「ごめん、気付かなくて」
いえ、と魅耶は流してくれたけど、打ち明けたせいか、さっきよりも急に顔色が青くなってる。
疲れでも出たの、とここ連日続いていたテストとか執行部の仕事とかを思い返して俺は訊ねてみる。