・『願い事』
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「てめー本当に月好きだな」
熱心に望遠鏡を覗き込む背中を近くに敷いたビニールシートに座り眺める。
天体観測の時たまにかける俺のそんな言葉にそいつはいつも曖昧に微笑む。ただそれだけだった。
きっと今回もそうなのだろう、そう思いながらかけた言葉にそいつは一言「……好きなわけじゃないよ」と零した。
はっとし、望遠鏡から顔を上げ月を直接見上げる背中を見つめる。
まだ、表情は見えねぇ。
そいつは小さく息を吐くと振り返り、柔らかく微笑んだ。
あの天体観測の日から8年。気付けばお互い高校一年生になっていた。
目の前のそいつは背も伸び、丸っこかった頬の輪郭もすっきりし、あの頃みてぇな子供っぽさはもうだいぶなくなっていた。
道端で転ぶこともなくなったし、俺が手を繋がなくても迷子にもならなくなった。
そんな『女』になったそいつは、そのままこちらへ歩いてくると、静かに俺の隣に腰を下ろす。
「……じゃあ、なんだよ」
喉から絞り出した声が、無意識に掠れた気がした。
こいつはいつも「月が見たい」と言っていた。
なのに、好きじゃねぇってどういうことだ。
俺の隣でいつもの甘いココアを飲みながら月を見上げる女の横顔を見つめる。
あの頃から変わらない長い睫毛が、顔に影を作る。
誰よりも知っているはずのその女が、知らない女に見えた。
いつからだ。いつからそんな……。
無意識に唇のココアを舐め取る仕草に、視線を奪われる。
その横顔から、目が離せない。
「……千空が、いつか行く場所だから」
「は、?」
「宇宙に、行くんでしょ」そう言って笑うそいつに言葉を失う。
「私はきっとついていけないけど、千空がいつかたどり着く場所を見たかったの」
「千空が行った時もここから見えるかな」そう言いながらそいつは空の月に手を伸ばす。
返す言葉を探す俺をそのままに、そいつは「手が届きそうだね」と愛し気に目を細め微笑んだ。
熱心に望遠鏡を覗き込む背中を近くに敷いたビニールシートに座り眺める。
天体観測の時たまにかける俺のそんな言葉にそいつはいつも曖昧に微笑む。ただそれだけだった。
きっと今回もそうなのだろう、そう思いながらかけた言葉にそいつは一言「……好きなわけじゃないよ」と零した。
はっとし、望遠鏡から顔を上げ月を直接見上げる背中を見つめる。
まだ、表情は見えねぇ。
そいつは小さく息を吐くと振り返り、柔らかく微笑んだ。
あの天体観測の日から8年。気付けばお互い高校一年生になっていた。
目の前のそいつは背も伸び、丸っこかった頬の輪郭もすっきりし、あの頃みてぇな子供っぽさはもうだいぶなくなっていた。
道端で転ぶこともなくなったし、俺が手を繋がなくても迷子にもならなくなった。
そんな『女』になったそいつは、そのままこちらへ歩いてくると、静かに俺の隣に腰を下ろす。
「……じゃあ、なんだよ」
喉から絞り出した声が、無意識に掠れた気がした。
こいつはいつも「月が見たい」と言っていた。
なのに、好きじゃねぇってどういうことだ。
俺の隣でいつもの甘いココアを飲みながら月を見上げる女の横顔を見つめる。
あの頃から変わらない長い睫毛が、顔に影を作る。
誰よりも知っているはずのその女が、知らない女に見えた。
いつからだ。いつからそんな……。
無意識に唇のココアを舐め取る仕草に、視線を奪われる。
その横顔から、目が離せない。
「……千空が、いつか行く場所だから」
「は、?」
「宇宙に、行くんでしょ」そう言って笑うそいつに言葉を失う。
「私はきっとついていけないけど、千空がいつかたどり着く場所を見たかったの」
「千空が行った時もここから見えるかな」そう言いながらそいつは空の月に手を伸ばす。
返す言葉を探す俺をそのままに、そいつは「手が届きそうだね」と愛し気に目を細め微笑んだ。