・夏の終わりに、帰る場所
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「またいつでも遊びにおいで」
そんな言葉をかけてくれる店主に曖昧に笑い、手を振る。
20年ぶりに顔を出したにもかかわらず、商店の店主は私のことを覚えていた。
それ自体は嬉しかったのだが、その後、私も覚えていない昔話が始まってしまったのだ。
昔から人の会話を切るのが苦手な私は、ただひたすらにうんうんと頷いた。
そして最後には、「うちの息子の嫁にどう?」という意味の分からないプレゼンまで始まってしまったので、「暗くなる前に戻りたいので」と噓をついて話を中断させた。
「気分転換のはずだったのに…」
思わずため息が漏れる。
相手がいないなんて軽く言うんじゃなかった。
結婚。
その単語がなぜかしっくりこなかった。
正直自分が結婚適齢期なのは知っている。
でも、なぜか、今まで出会ってきた誰ともそういうことが考えられなかった。
「それに、なんか忘れてる気がするんだよなぁ」
そう、こと恋愛のことになると何かが頭をかすめるのだ。
遠い昔に、なにか大事なことを約束したような。
「…あれ?」
そこまで考えたところで、ふと、祖母の家に帰る道の途中のはずれに石の階段があることに気が付いた。
はて、こんな階段先ほど通った時にあっただろうか。
気付けば足が引き寄せられるように近付き、階段の先を見上げる。
階段は、山を切り開くように木と木の間を真っすぐに伸びていた。
次の瞬間、足は階段を上り始めていた。
長い階段なのに不思議と疲れを感じず、止まる気も起きない。
そして数分、長い階段を登り切った先には1つの建物。
「…神社?」
“それ”は社と呼ぶにはささやかで、でも何故か厳かな雰囲気を感じる建築物だった。
「誰だ」
目の前の建物を呆然と見つめていると、背後からの声に思わず振り返る。
足音なんて、聞こえなかったのに。
「テメー…昔ここに来たことあるか」
目の前に突然現れた青年が僅かに目を細める。
その赤い瞳を私は知っていた。
そうだ。逆立った髪、着物を着た彼は…
「千空…?」
「正解だ。100億万点やるよ」
私の問いかけに目の前の青年――千空は楽し気に喉を震わせ「久しぶりだなぁ」と笑った。