・『願い事』
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小学1年生の時、自分のラボを手に入れた。
百夜のヤローが「サンタが用意してくれた」と言っていたが、そんなもんじゃねぇってのは子供ながらにわかった。
どれもこれも、科学をなんでも試しまくるにはお有難すぎる物ばかりで、気付けばその部屋は特別な場所になっていた。
「千空、これなぁに?」
所謂『お隣さん』なこいつは、いつも通り俺の部屋に入ると、新しい科学グッズに俺以上に目を輝かせた。
見慣れない物を一つ一つ楽しげに観察する中、窓際に置かれた望遠鏡を指さした。
「そいつは天体望遠鏡だ。空にある月とか星を見るやつな。見たことねぇか?」
「うん、初めて見た」そう言うと、物珍しそうに望遠鏡のレンズを覗き込む。
「蓋してあるから見えねぇぞ。つか、昼間に気軽に覗き込むな。太陽観たら目焼けるぞ」
蓋をしておいて本当に良かった。
俺の言葉に、「はえー怖いねぇ」と緊張感のない声を漏らしてふわふわと笑う姿を見て、内心ため息を吐く。
こいつはいつもそうだ。危機感ってもんが致命的に足りねぇ。
昔から、目を離せばすぐ転ぶし、興味を引かれたものにつられてふらふらとどこかへと行ってしまう。
商業施設の館内放送でこいつの名前が呼び出されるのも、一度や二度じゃねぇ。そのたび迎えに行くのは決まって俺だった。
今までは俺が手を繋ぐなりなんなりしてきたが、こいつも俺ももう小学生だ。
行動範囲やら人間関係も広くなって、ずっと見ていられるわけでもねぇ。
いい加減なにか対策を考えなきゃな。
俺がそんなことを真剣に考えている間も、こいつは興味深そうに望遠鏡を眺めている。
そんなに気に入ったのか?
「……気になんのか?」
俺の言葉に、ぱっとこちらへ顔を向ける。
何かを言いかけて口を開くも、そのまま言葉を飲み込んだ。
しゅんと肩を落とし、指先をもじもじと遊ばせる。
明らかに何か言いたげだ。
こいつのたまに出る悪い癖だった。
昔から怪我や迷子を繰り返してきたせいか、俺に世話を焼かれることに引け目を感じているらしい。
そのせいで、自分の言いたいことを飲み込む事があった。
気にすんな、と何度言っても未だに治りそうもないその癖に、俺は呆れたように声をかけた。
「遠慮すんな。言え」
俺の声に小さく肩を震わせる。
表情を伺うようにこちらへ視線を向けると、「無理だったら、いいんだけど」とか細く声を漏らした。
月を見てみたい。
それがそいつの希望だった。
そんなこと、と正直一瞬思ってしまった。
でも実際、俺たちはまだ小学生で夜の外出は容易ではなかった。
家が隣なのだからこの部屋からそのまま見れば済む話だ。
だが、目の前のこいつが言いてぇのはそういうことではねぇ。
それくらいはすぐにわかった。
それでも、こんな我儘は今更だ。寧ろこいつの言う我儘は俺にとっては我儘にもならない。
はぁ、と深く息を吐き出し、ガシガシと自身の後頭部をかく。
そんな俺の様子を見て大袈裟なほど肩を震わせるそいつに、「確認がある」と声をかけた。
「大人は百夜に頼むとして、いつもの土手まで行くことになる。てめー夜起きれんのか」
「うん、頑張る」
「親御さんの許可は」
「千空が一緒なら、大丈夫だと思う。説得する」
俺が一緒ならってなんだ。同い年だろが。
内心そう呆れながらも真っ直ぐに目の前のそいつの表情を見つめ、「最後に、」と続ける。
「ぜってぇ俺の隣を離れんな。約束できるか」
俺の言葉に、その丸くて大きな瞳が更に広がり、輝くのを見た。
百夜のヤローが「サンタが用意してくれた」と言っていたが、そんなもんじゃねぇってのは子供ながらにわかった。
どれもこれも、科学をなんでも試しまくるにはお有難すぎる物ばかりで、気付けばその部屋は特別な場所になっていた。
「千空、これなぁに?」
所謂『お隣さん』なこいつは、いつも通り俺の部屋に入ると、新しい科学グッズに俺以上に目を輝かせた。
見慣れない物を一つ一つ楽しげに観察する中、窓際に置かれた望遠鏡を指さした。
「そいつは天体望遠鏡だ。空にある月とか星を見るやつな。見たことねぇか?」
「うん、初めて見た」そう言うと、物珍しそうに望遠鏡のレンズを覗き込む。
「蓋してあるから見えねぇぞ。つか、昼間に気軽に覗き込むな。太陽観たら目焼けるぞ」
蓋をしておいて本当に良かった。
俺の言葉に、「はえー怖いねぇ」と緊張感のない声を漏らしてふわふわと笑う姿を見て、内心ため息を吐く。
こいつはいつもそうだ。危機感ってもんが致命的に足りねぇ。
昔から、目を離せばすぐ転ぶし、興味を引かれたものにつられてふらふらとどこかへと行ってしまう。
商業施設の館内放送でこいつの名前が呼び出されるのも、一度や二度じゃねぇ。そのたび迎えに行くのは決まって俺だった。
今までは俺が手を繋ぐなりなんなりしてきたが、こいつも俺ももう小学生だ。
行動範囲やら人間関係も広くなって、ずっと見ていられるわけでもねぇ。
いい加減なにか対策を考えなきゃな。
俺がそんなことを真剣に考えている間も、こいつは興味深そうに望遠鏡を眺めている。
そんなに気に入ったのか?
「……気になんのか?」
俺の言葉に、ぱっとこちらへ顔を向ける。
何かを言いかけて口を開くも、そのまま言葉を飲み込んだ。
しゅんと肩を落とし、指先をもじもじと遊ばせる。
明らかに何か言いたげだ。
こいつのたまに出る悪い癖だった。
昔から怪我や迷子を繰り返してきたせいか、俺に世話を焼かれることに引け目を感じているらしい。
そのせいで、自分の言いたいことを飲み込む事があった。
気にすんな、と何度言っても未だに治りそうもないその癖に、俺は呆れたように声をかけた。
「遠慮すんな。言え」
俺の声に小さく肩を震わせる。
表情を伺うようにこちらへ視線を向けると、「無理だったら、いいんだけど」とか細く声を漏らした。
月を見てみたい。
それがそいつの希望だった。
そんなこと、と正直一瞬思ってしまった。
でも実際、俺たちはまだ小学生で夜の外出は容易ではなかった。
家が隣なのだからこの部屋からそのまま見れば済む話だ。
だが、目の前のこいつが言いてぇのはそういうことではねぇ。
それくらいはすぐにわかった。
それでも、こんな我儘は今更だ。寧ろこいつの言う我儘は俺にとっては我儘にもならない。
はぁ、と深く息を吐き出し、ガシガシと自身の後頭部をかく。
そんな俺の様子を見て大袈裟なほど肩を震わせるそいつに、「確認がある」と声をかけた。
「大人は百夜に頼むとして、いつもの土手まで行くことになる。てめー夜起きれんのか」
「うん、頑張る」
「親御さんの許可は」
「千空が一緒なら、大丈夫だと思う。説得する」
俺が一緒ならってなんだ。同い年だろが。
内心そう呆れながらも真っ直ぐに目の前のそいつの表情を見つめ、「最後に、」と続ける。
「ぜってぇ俺の隣を離れんな。約束できるか」
俺の言葉に、その丸くて大きな瞳が更に広がり、輝くのを見た。