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平和な日常~夏~3

祭りが始まる予定時間は十二時からで現在の時刻は十時半なのだが、すでに周辺では出店を設置する人達だけでなく遊びに来た学生なんかも結構居て賑わっている。

しかも付近にはすでに《第一回麻帆良納涼祭》というポスターや旗が掲げられており完全な祭りになっていた。


「申し訳ありません。 駐車場はすでに満車なので他にお願いします」

「荷物降ろす間だけでも近くに止めれないっすか?」

そのまま車は公園の駐車場に差し掛かるが、すでに駐車場は満車であり納涼祭実行委員とのネームを付けた大学生が交通整理を行っている。


「許可書はお持ちですか? 本日は公園内での出店等の営業は許可制になってるのですが……」

「許可書は持ってないけど、一応出店する予定にあるはずなんだけど。 一応俺が主催者になってるから」

「……はい?」

実行委員の大学生はどうやら横島を飛び込みで出店の営業をしに来た人と勘違いしたらしく、許可書がないと公園内では営業出来ないと丁寧に説明していく。

そんな大学生に横島は少し困ったように自分が主催者だと告げるが、大学生は一瞬意味が分からなかったようでポカーンとしてしまう。


「ごめんなさい!」

それから五分後、大学生は実行委員会の本部に連絡してようやく横島のことを確認したらしく深々と頭を下げる。


「いや、いいって。 成り行きで主催者になったたけだからさ」

まさか普通にワゴン車で来た横島が主催者だとは思いもしなかった大学生は本当に申し訳なさそうに謝るが、正直横島としては人目も気になるので大袈裟に謝るのは止めて欲しい。

結局横島は大学生に誘導されて関係者用の駐車場に入るが、会場はすでに祭りが始まってるかのように混雑している。

公園からは人々の楽しげな声や音楽なんかも流れており、気が早い連中はもう騒いでるらしい。


「ご苦労様ネ。 出店の設置は終わってるヨ。 マホラカフェは一等地ネ」

横島達が車を降りてあまりの賑わいに圧倒されていると、超が状況の説明にやって来るがそれは横島が朝に聞いた話より更に変更になっていた。

今回横島は超とあやかに細かい部分ほとんど任せており、横島自身が関わったのは金の掛かる問題の判断くらいである。

超とあやかが優秀なのは十分知っているし、二人は人の使い方なども上手く横島が口を挟む必要などないと考えていたのだ。

実際祭りの規模を考えると、現状で判明してる経費は驚くほど少ない。

祭りの屋台や飾り付けなどは麻帆良祭で使用する物を学園からタダで借りているし、実行委員や警備の人員も全てボランティアである。

消耗品や光熱費なんかは流石に経費として必要になっているが、それも規模に比べるとたかが知れていた。

そんな運営費の低さに比べると驚くほどの祭りの規模に、横島も驚くしかなかったようである。


「なあ、これ本当は夏休みの宿題が終わった打ち上げだったんだけど」

「人の噂は怖いネ。 ちなみに十二時の祭り開始のセレモニーで、主催者から挨拶があるから考えておいて欲しいヨ」

「挨拶って言われもなぁ……」

自分は一体どうなるんだろうと横島は言葉に出来ない不安を感じるが、今更逃げ出す訳にもいかない。

どこで間違ったのだろうとしばらく考え混むが、横島自身にもよく分からなかった。



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