平和な日常~夏~3

それから数日が過ぎて夏休みも残り僅かになると、横島の店はいつもに増して女子中高生で賑わっていた。

中高生は夏休みも後僅かとなり、そろそろ夏休みの宿題が気になる頃である。

特に近所にある複数存在する女子寮の生徒は、宿題の解らない問題を横島に聞きに来る者も少なくない。

理由は扱く単純で学校より近いからであった。

加えて横島以外にも偶然居合わせた上級生や高校生に教えて貰う者も居たりして、店内は相変わらず賑やかで学校のような雰囲気である。


「流石に読書感想文は手伝えんぞ」

この日バイトに入っていたのは木乃香とのどかであり、横島は仕事そっちのけで宿題を教えている。

それと言うのも木乃香とのどかはすでに夏休みの宿題を終えており、明日菜もお盆期間にかなり進んで後少しだ。

まだ宿題が多く残ってるのは、夕映に美砂達三人組やまき絵達四人や鳴滝姉妹などである。

まあ通常の宿題はそこそこ進んでいるが、なかなか進まないのは自由研究や読書感想文だった。

特にまき絵や鳴滝姉妹なんかは日頃読書などしないので、横島になんとかして欲しいと泣きつくが流石に読書感想文は教えようがない。


「今日の日替わりはそうめんか~」

さてそんな宿題をする少女達もお昼頃になるとお腹が空いてくる。

この暑い中をわざわざ寮に戻るのも面倒なので横島の店で昼食にする者も多いが、この日の日替わりはごく普通のそうめんだった。


「今度はそうめん作ったの?」

「いやこれは乾麺のやつだよ。 作れないこともないけど手間を考えたら買った方がいいしな」

横島ならばきっとそうめんも手作りではと考えた明日菜は手作りなのかと尋ねるが、流石に横島もそうめんまで作るほど暇ではない。

基本的に自分で作れる物は自分で作る横島だが、当然市販品を買うこともあった。

ただそうめんのつゆは自分でダシを取っているし、麺もそこそこいい麺を買っている。

この時期になるとそろ夏の商品が安くなる季節であり、そうめんも結構安く購入していたのだ。



「うごいちゃダメ」

そんな多くの少女達が夏休みの宿題に追われる中、自分も勉強を頑張りたいと考えたタマモはビッケとクッキをモデルに絵を描いていた。

じっとしてるのが暇らしく時々ふらふらと動くビッケとクッキにタマモは動かないように言うと、二匹はちょっと困った表情で元の位置に戻っていく。

ちなみにビッケとクッキとは、モデルになる代わりに午後は一緒に遊んで散歩に行く約束を交わしている。

本来の飼い主である桜子やいつも遊んでくれる横島が忙しいので、二匹はここ数日タマモと一緒に遊ぶ日々であった。

タマモはビッケとクッキと庭で他の猫達と一緒に遊んだり近所を散歩したりしているので、ご近所では評判の猫好きな子供として顔が知られている。

先日なんかは近所の飼い犬の元でタマモと猫達が一緒に遊んでいたので、犬の飼い主がビックリするなんてこともあったようだ。

加えて店の常連の人にはお土産をあげたこともあり、タマモは近所を散歩してるとおやつを貰うこともよくある。

実はタマモの行動は土偶羅が見守っており流石の横島も四六時中見てないので詳しく知らないが、タマモは近所の老人を中心に着々と友達を増やしていた。

そしてタマモが仲良くなった近所の人々が店に顔を出すようになり、タマモは無意識に店の顧客を増やしていたのである。



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