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麻帆良祭

「本当に大きくなったのう。 あやかとケンカしてた頃が懐かしいわい」

「アハハ、今でもケンカしてますよ」

「それでいいんじゃよ。 ケンカの一つも出来んような友達など不要じゃ」

美砂が固まってる間に明日菜とあやかの祖父が話しをするが、彼もまた麻帆良に来た頃から明日菜を可愛がっている一人である

孫娘と本気でケンカする明日菜を気に入り、本当の孫のように時には叱り時には可愛がった人物だった


彼の名は雪広清十郎

雪広グループ会長であり日本の財界で知らぬ者も居ないほどの人物である

かつてバブル期の日本でバブル崩壊を予測していた数少ない経営者であり、堅実な経営をした事でも有名な人物だった

バブル当時はそんな彼の意見は老人の戯言と陰口を叩く者も居たが、バブル崩壊の影響を最小限に押さえたその手腕から現在ではその評価が高い

ちなみにこれは余談だが雪広グループは戦前から関東魔法協会との繋がりが深く、表の政界や財界との繋がりが薄い企業でもあった

そのため経団連などの財界組織には属さず、政界とも一定の距離を開けた独自の勢力を持つ存在である

彼自身は政界や財界と一定の距離を開けているため政財界への直接的な影響力はそれほどないが、雪広グループの方針には一般企業も注視しているため間接的な影響力は大きかった

特に雪広グループは高度経済成長時代から東南アジアなどに進出しており、この世界において東南アジアとはかなり親密な関係である

反面で極東アジアにおいては取引はあるものの、投資をするほどでもなく他の地域と比べると疎遠であった

今では雪広グループが動けば日本経済が動くとまで言われるほどの影響力はあるが、いろいろと癒着が噂されている政財界では煙たがられてる側面もあったりする



「お待たせ……ってどうかしたのか?」

さて話しは戻り料理を運んで来た横島は、固まっている美砂と見知らぬ老人と話す明日菜に首を傾げてしまう

何も知らない横島から見れば、明日菜が老人にナンパされてるように見えていた


「あの人いいんちょのおじいちゃんなんだって……」

「はっ……?」

固まってる美砂に事情を聞く横島だが、ボソッと呟いた美砂の言葉に流石にポカーンとしてしまう


「おう、出来たのかのう? 時間外にわざわざすまんのう」

「いえ、この度は手厚い支援をありがとうございます」

美砂と一緒に固まっていた横島だったが、清十郎が横島に気付き料理を取りに来ると表情を一変させて挨拶する

一応大人な訳だし流石に最低限の挨拶は必要であった


「君が横島君か? 孫から面白い料理人を見つけたと聞いておるわい。 楽しみにしとったんじゃ」

初対面な為に明日菜が見たことないほど大人な対応をする横島だったが、清十郎はあまり変化なくその辺にいる爺さんといった感じだ


「いや~、料理は趣味なんであんまり期待されると辛いですよ」

面白い料理人と言われてどんな噂をされてるのかと考えると苦笑いが浮かぶ横島だったが、清十郎は気にした様子もなく料理を口にする



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