麻帆良祭への道・2

さてその日横島は一睡もしないままでいつもと同じように朝の日課から始めるが、元々人間でない為必ずしも睡眠が毎日必要な訳ではない

そして朝の時間営業している横島より一足先に仮設店舗に集まった2-Aの少女達は、一晩でかなり作業が進んでることに驚いていた


「私と超さんとマスターと那波さんでやったんですよ。 私達は皆さんじゃ出来ない照明や電気関係を中心で、テーブルと椅子はマスターと那波さんです」

驚き誰がやったのかと騒ぎになる一同だったが、一晩でこんなことをするのは超一味か横島しか考えられない

驚くクラスメートの姿をニヤニヤと見ていた超と葉加瀬だったが、追求されるとあっさりと真実を話していた


「そういえばちづ姉朝帰りだったもんね」

「うふふ、たまには徹夜するのも楽しかったわよ」

唯一予期せぬ千鶴の名前があったことに夏美を始め友人達は驚くが、千鶴はニコニコと機嫌よく昨夜の事情を教えていく


「横島さんの考えそうなことですね」

「そやな~」

一方葉加瀬や千鶴の話を聞いていた夕映は全く驚きもない様子であり木乃香やのどかまで同意するが、今朝誤解していた明日菜だけは静かに苦笑いを浮かべていた

無論明日菜も横島を疑っていた訳ではないが、あの時はそれ以外考えられなかったのだ

案外おっちょこちょいなのかもしれない


「怪しいわね……」

「何が怪しいの?」

「那波さんの表情がいつもより嬉しそうな気がするわ。 なんかあったのかも……」

対して美砂は千鶴の微妙な表情の変化に何かあったのではと疑っていた

円は考え過ぎだと笑っているが美砂は至って真剣である


「なんかさ、あの人の優しさって妙に心に入り込むのよね」

「でも那波さんだよ。 今までも数々の男共に告白されたって噂もあるし、そんな簡単にいかないでしょう」

「そう思うけど、マスターもたいがいだから……」

なんか嫌な予感がするといいたげな美砂に円は笑っているが、美砂の女の勘の鋭さを円はのちに理解することになる


「なんだまた空振りか~」

そして報道部の朝倉は今朝の朝一で入って来た情報が空振りだったことにがっかりしていた

実は朝倉には朝一で横島と千鶴が朝帰りした情報が入っており、至急裏付け調査を頼まれていたのだ


「だいたいあの人の噂って真偽がはっきりしないネタが多いのよねー」

一人愚痴る朝倉だったが、横島の噂がイマイチ真偽がはっきりしない噂が多いのは報道部では結構有名らしい

それに横島と噂になった女性は、木乃香や明日菜を筆頭に刀子や茶々丸など十人以上が噂になったことがある

流石に教師である刀子は確認を取らなかったが、他の者は交際は否定しており怪しいが恐らくはシロだろうとの結論で終わっていた


「流石に騙された過去のネタは記事に出来ないし」

横島の過去はいろいろ噂があるがどれも真偽がはっきりせず、加えて2-Aでは定説となっている横島が騙された過去などは朝倉としては記事に出来なかった

まあ麻帆良スポーツは都市伝説級の噂でも記事にはするが、基本的に人を傷付ける記事は書かないのがモットーらしい

結局横島の数多の噂は微妙に傷付ける可能性がある為、記事に出来ないのであった


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