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異邦の占い師

次の日報道部により発行されてる麻帆良スポーツの三面には、世界樹前広場に面白い占い師が現れたと小さな記事が掲載されていた

木乃香に噂を聞いた朝倉和美が報道部のメンバーと横島の取材を試みたが、相変わらずの軽い調子と特に代わり映えのしない占いの様子に面白い占い師だとしか書きようがなかったのだ

たまたま特に記事にするようなネタがなかった事から小さくても記事になったが、普通ならば記事にするほどのネタではない

それが偶然か必然かは誰にも分からないが、これが麻帆良に横島を知らせる第一報となる



その日横島は異空間アジトから早朝に転移して来て、麻帆良の街を散歩していた

特に用事があった訳ではないが、広い麻帆良を散歩がてら見て回っていたのだ


(このほとんどが私有地だとはな……)

見渡す限りの西洋風の町並みだが、麻帆良の街の一部の例外を除いて全てが麻帆良学園の私有地だった

住宅地や商店街ですら、麻帆良学園から土地を貸し出されてるだけなのである

表向きは学園都市としての運営の為だとなっているが、その裏には蟠桃とそれに繋がる地脈のポイントを押さえる意味合いがあるのだろう


(私有地だから麻帆良学園の学園長が事実上の支配者って訳ね。 しかも近衛家の人間とくれば、裏じゃ日本政府も一枚噛んでるわな)

土偶羅からの昨日の報告を思い出す横島は、この麻帆良の裏側の一端に驚きを感じていた

一応日本の一部なのだが、私有地なため半ば治外法権化しているのだ

秘匿されてるとはいえ古くからある政府が魔法を知らぬはずはないし、裏では繋がっているとの報告だった


「まあ派手なネオンや看板がない分、景色はいいわな」

麻帆良学園側が派手なネオンや看板を規制してるおかげで麻帆良の町並みの景色はいい

裏側のドロドロとした部分を抜いて考えると麻帆良はいい街である


「あっ!? 昨日の占い師!!」

「恋するお嬢さんじゃないか? 新聞配達なんてしてるんだな~」

あてもなく散歩をしていた横島だが、突如後ろから声をかけられていた

声の主は明日菜であり、その手には配達中の新聞が抱えられている


「こっ……恋するって……、そんな変なあだ名付けないで下さい! 私の名前は神楽坂明日菜です!!」

恥ずかしいあだ名で呼ばれた明日菜は若干顔を赤くして横島に抗議する

流石に《恋するお嬢さん》は嫌なようだ

微妙にセンスがないあだ名なのは横島なゆえ仕方ないだろう


「アスナちゃんね。 そう言えば昨日は君の名前聞かなかったからな~」

実は昨日木乃香と横島は連絡先を渡す時に名前を名乗っていたが、特に名乗る必要もなかった明日菜は名乗らなかったのだ


「こんな朝早くから占いしに行くんですか?」

「いや、観光を兼ねた散歩だよ。 ただでさえ客が来ないのに、こんな朝からやっても無駄だからな」

「あんな感じじゃお客なんて来ないですよ。 せめてそれらしい服でも着たらいいのに……」

明日菜の新聞配達に合わせて歩きながら世間話をする二人だが、昨日が初対面の他人だとは思えぬような会話だった

それは元々人見知りのしない横島と明日菜の性格が原因だろう


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