このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

平和な日常~冬~

結局この日の横島は採寸して終了であり、後日仮縫いをする日を決めると店を後にする。

そのまま次は木乃香のパーティードレスを買いに行くことになるが、こちらもどんな物がいいのか木乃香自身も悩んでいた。

横島は残りは靴を買うくらいだが、木乃香は女性なので靴の他にアクセサリーも最低限必要である。


「ウチはおじいちゃんが恥をかかんかったらええだけなんやけど……」

尤も木乃香本人は祖父である近右衛門が恥をかかないかを心配しており、好みなんかは二の次のようだが。


「私やあやかが買ってる店に行きましょうか? 世界的な知名度はさほど高くありませんが、雪広グループが支援してる若いデザイナーの居る店があるんです」

日頃の木乃香を見てるとあまり気にならないが、学園長の孫も大変なのだなと明日菜達は改めて感じる。

まあいくら学園長の孫とはいえ普通の学生なので過剰な配慮は必要ないとも言えるが、それでも下手な格好だと笑われるのは近右衛門なのだ。

正直少女達には大人の社交界の配慮やさじ加減など分かるはずもなく、頼りになるのはやはり千鶴であった。

実は今回の買い物は美砂達やまき絵達は予定外だったが、千鶴だけは夕映達が頼んで来てもらった人物である。

本来はあやかと千鶴を頼もうとしたのだが、あいにくあやかの都合がつかずに千鶴だけとなっていた。

横島もパーティーは経験がないようだし誰か経験者に相談に乗ってもらおうと頼んだのである。


「それがええな」

最終的に木乃香は千鶴が勧める何件かの店から、雪広グループが支援してるデザイナーの居る店に行くことに決めていた。

これに関しては麻帆良学園のパーティーでは、そのデザイナーのドレスがよく着られているとの情報もあり無難な選択とも言える。

パーティーでは女性のファッションは当然注目を集めるが、雪広グループ支援のデザイナーだと学園のパーティーでは批判されにくいという情報を千鶴が漏らしたのだ。

下世話な話になると雪広グループに媚びを売りたい人間は当然のように雪広グループが支援してるデザイナーの服を着ることが当然であり、そのデザイナーが麻帆良学園出身ということで学園関係者にも評判が良かったとの事情がある。


「本来は自由なパーティーだから、あまり気にする必要はないんだけどね」

千鶴は過剰に気にする必要はないと言いつつも、迷うならその店で買った方がいいと告げた。

元々学園の社交場にでない木乃香なだけに、正直何を着てもさほど批判されることはないだろう。

逆に木乃香を褒めて近付きたい関係者が多いだろうと千鶴は考えていたが、麻帆良学園において雪広グループは特別だった。

学園長の孫として注目を集める木乃香が雪広グループの関係するドレスで出席することには、それなりに意味のある選択なのである。

現当主が近右衛門の盟友であり明治期から麻帆良を支えて来た雪広家の存在は、那波家と比べても遥かに重い存在なのだ。

恐らく当日はあやかがフォローしてくれるだろうし、木乃香が雪広グループ関係のドレスで出席すれば関係者が騒ぐこともないし近右衛門も恥をかく可能性はかなり低くなると千鶴は考えていた。

木乃香と違い最低限は社交の場に出ていた千鶴は、流石に手慣れた様子であった。



9/100ページ
スキ