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平和な日常~冬~

「確かに美味いな。 茶葉と水の相性がもの凄くいいし、いれ方も上手いわ。 このお茶だけで生きていけるんじゃないか?」

お茶が美味しいと声を上げる少女達につられて横島も飲んでみるが、それはただの高級なお茶ではなくバランスと卓越した技量が垣間見えるお茶だった。

正直横島も驚いたほどで、千鶴が紹介する訳だと改めて納得したが。


「お茶は若い頃に勉強したんですよ」

一方横島や若い少女達が驚く姿が少し嬉しかったのか、北崎は柔らかい笑顔を見せながら若い頃に勉強したからだと告げる。

あまり深く語らないが、見た目以上に苦労をしたのかもしれないと横島は思う。

緊張というか雰囲気に飲まれていた少女達の心を、一杯のお茶で掴んだ気遣いには凄いとさえ感じていた。

そのおかげか店内は和やかな雰囲気になり、少女達もオーダーメードスーツに興味津々な様子である。


「パーティー用にあまり高級感を出さずにですか。 了解しました」

その後北崎は横島の予算や要望を聞き採寸や生地を決める作業などをしていくことになるが、予算や生地などに関しては完全にお任せにしてしまう。


「失礼ですが、こちらの服はどこでお買い求めになりました?」

そんな北崎は淡々と仕事を熟していたが、唯一というか初めて表情を変えたのは採寸の為に横島が着ていたコートを預かった時だった。

今日横島が着ていたのは割とシンプルなコートだったが、何か気になったのかコートを調べるように見ている。


「ああ、それは洋裁が趣味の知人が作った物を貰ったんですよ」

「そうですか。 失礼しました。 そちらのお嬢さん達の服も同じ方の物ですね。 非常にいい服です。 製作した方は何より着る人間の気持ちをきちんと考えている職人のようです」

横島のコートは特に高級な生地を使ってる訳でもなかったが、ハニワ兵が横島の為に手作りした一品だった。

何より動きやすく横島の動きの邪魔にならないように考えた物であり、北崎はそれに気付いたようである。

この日は同じく先日横島が誕生日にプレゼントした夕映とタマモとさよも同じハニワ兵製のコートを着ており、それも一目みただけで見抜いてしまう。


「流石は那波さんのお連れになったお客さんだ。 私も今回のご依頼の参考にさせて頂きます」

そのまましばらくコートを見ていた北崎だが、何かインスピレーションのような物を感じたのか今回の依頼の参考にすると告げて仕事に戻っていく。

そして周りの少女達は一流の職人である北崎がわざわざ認めたことで夕映達が着てるコートを改めて見ているが、タマモが着てる服を作る人に関しては前々から噂になっていたのでさほど驚いた様子はない。

ただ一流の職人に認められたことで改めて評価を上げてはいたが、横島の知り合いが普通じゃないのは今更な感じもあった。


「タマちゃんの服作ってる人って凄いんだね。 マスター私の誕生日も期待してるからね」

「既製品が悪い訳ではありませんが、着やすいのは確かですよ。 オーダーメードの良さがこれほどとは知らなかったです」

予想以上にいいプレゼントを夕映が貰ったことで自分も欲しいと思ったのか、横島に誕生日プレゼントをねだる美砂や桜子に混じりまき絵と裕奈も誕生日プレゼントお願いと騒ぎ始める。

流石に常識人の円や亜子やアキラは自重していたが。



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