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平和な日常~冬~

「本当に?」

「春まで無職で家すらなかった俺に期待するなって」

パーティーなんか知らんと言い切る横島だが、周りの少女達は半信半疑といった感じだ。

取り分け美砂達とまき絵達は今だに横島の金持ち説を若干疑っており、実はパーティーなんかも手慣れてるのではと考えている。


「パーティーの経験がないのは本当だと思うです。 堅苦しいのが嫌いな人ですし意外とめんどくさがり屋ですから」

一方横島の言うことをそのまま信じないのは夕映達も同じだが、こちらは本当にパーティーの経験がないだろうと考えていた。

今回のパーティーも横島は元々出席するつもりがなかった訳だし、加えて横島は意外とめんどくさがり屋なのを彼女達は知っている。

料理のように横島本人が好きな物は手間を惜しまないが、反面で興味がない物にはかなりいい加減なのだ。

仮にパーティーに出席経験があっても、料理だけ食べてさっさと帰るような人間だろうと思っていた。


「とりあえず木乃香と横島さんの服ですが……」

そんな訳でおしゃべりをしながら東京に到着した一行だったが、まずは横島と木乃香がパーティーで着る正装を買いに行くことにする。


「私の知ってる店で良ければ案内するわ」

だがパーティーに行った経験のない中学生の少女達が、パーティーで着るドレスやスーツを何処で買えばいいかなど知るはずもない。

結局は少女達の意見を参考に千鶴の案内で移動することになった。


「うわ~」

そんな一行が最初に入った店は、世界的に高級ブランドの店である。

とりあえずパーティーと言えばブランドでしょうと言う美砂達の意見で来たのだが、中学生の少女と二十歳そこそこの横島だと場違いな雰囲気だった。


「木乃香、お金大丈夫?」

「うん、おじいちゃんがかなり多めに持たせてくれたんやけど……」

ブランド物や値段を見てキャーキャーと騒ぐ少女達を前にしても店員は笑顔を崩さないが、明日菜はあまりの値段に頭を抱えて木乃香の財布の中身を心配している。

正直ここまで高級なブランド物でなくていいのにと横島と木乃香は思うが、美砂達やまき絵達は見るだけはタダだからと開き直っていた。

流石にここで買うとは思ってないが、最初に高い店を見とけばいいんじゃないとしか考えてないらしい。


「タマモ、なんか欲しい物あるか?」

そして横島はと言えば、自分のスーツではなくタマモの子供服やアクセサリーなんかを見ていた。

タマモと手を繋ぎ見て歩く横島だが、タマモは物珍しそうにしてはいるが特に欲しそうな物はないようだ。

基本的に服はハニワ兵が用意してくれるし、タマモもそれを気に入っておりわざわざ欲しい服はないらしい。


「おみやげは?」

「ここでお土産を買うのは勘弁してくれ。 あとで別の店に行くからな」

結局タマモは自分の服よりも、お出かけ恒例のお土産を買いたくてウズウズしている。

ただ横島としては流石に高級ブランドで大量にお土産を買うのは勘弁して欲しかった。

ぶっちゃけお金がいくらあっても足りないし、もし買えば木乃香達に怒られるのが明らかなのだから。

一方のタマモは最近木乃香達の教育のおかげかお金の大切さを多少なりとも覚えたが、基本的に何がダメで何がいいのかまではイマイチ理解してない。

この日はただ初めて来た高級店が珍しいだけだった。



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