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平和な日常~冬~

同じ頃タマモはクリスマス関連の絵本を読んでいた。

中には有名な物からマイナー絵本まであったが、最近テレビや街で見かけるクリスマスを知らなかったタマモに夕映とのどかが借りて来てくれたのだ。


「そろそろ店もクリスマスの飾り付けしなくちゃね」

「でもクリスマスの飾りはないですよ」

フムフムと真剣な表情で絵本を読むタマモの隣ではアルバイトをしている明日菜とさよが、クリスマスの飾り付けをどうしようかと話している。

気の早いとこでは十一月中に始めたところもあるが、横島の店ではまだでありそろそろかとの話はぽつぽつと出ていた。


「ねえ、さんたくろーすさんはなんでえんとつからくるの?」

クリスマスに必要なツリーは基本として入口に飾るリースや他にも店内を飾りたいと話が盛り上がる明日菜とさよだが、タマモがふとサンタクロースに関して疑問を口にすると二人は顔を見合わせて困ってしまう。

日頃タマモの疑問に答えるのは夕映達か横島であり、明日菜とさよはどちらかと言えば一緒に聞いてる側の人間なのだ。

まさか幼いタマモにサンタクロースなんて居ないとは言えないし、下手な嘘を付けない二人は困ったようになんとか理由を考えていく。


「あっ、分かりました! サンタクロースは壁を通り抜け出来るんですよ!」

「そんな幽霊じゃあるまいし……」

タマモと三人並んで理由を考える明日菜とさよだが、真っ先に閃いたのはさよであり自身の経験からサンタクロースは幽霊のように壁抜け出来るから煙突から入ったように見えるんだと言い切る。

そんなさよの意見にタマモは感心したように頷くが、明日菜は流石に少し無理がある言い訳だと苦笑いを見せた。

尤もさよの思い付きは横島の世界に居たサンタクロースの真意に限りなく近かったが。


「サンタクロースって確か夜中に来るのよね。 家の人を起こさないように入るには煙突が一番いいんじゃないの?」

さよの意見が少し強引だと考えた明日菜は自分なりに考えるが、今度は煙突がない家はどうなるのと聞かれると返す言葉に戸惑ってしまう。


「そうよ! サンタクロースは魔法が使えるのよ! だから空を飛んだり煙突のない家にも入れるんだわ!!」

「おおー、まほうなんだね! あすなちゃんあたまいい!!」

純真な瞳で疑問を知りたがるタマモに困りに困った明日菜が頭を振り絞って考えた結末は、サンタクロースは魔法使いだというものだった。

そしてタマモとさよがその答えに何故か納得して絶賛すると、タマモの中のサンタクロースは魔法が使える存在として確立する。

この時偶然にも魔法生徒の佐倉愛衣が初めて先輩である高音を店に連れて来ていたが、明日菜の突拍子もない答えを聞いてしまい思わず飲み物を噴き出しそうになったのは幸いなことに明日菜達には気付かれなかった。


じゃあ私もサンタクロースにプレゼントをあげるんだと、相変わらずおかしな方向にやる気を出すタマモを二人は不思議そうに見つめていた。



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