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平和な日常~秋~3

図書館探検を終えた翌朝、途中で寝てしまって落ち込むタマモを励ますように横島は庭の柿の収穫を始めようとしていた。

これも以前収穫した梨と同じく横島が来る前から残っていた果樹であり、庭を取り囲む塀に添うように何本か植えられている。


「立派な木ですね」

「前の住人がずっと世話してたらしいからな」

さよとタマモと三人並んで食べ頃に実った柿の木を見上げる横島だが、やはりこれも収穫までは苦労が多かった。

普通に育てるならば剪定はもちろん薬剤の散布も必要に応じてやらねばならず、いろいろ苦労してようやく収穫まで来たのだ。


「せっかくだし前の住人にも送ってやるか」

さよとタマモに手伝ってもらいつつ脚立を使い柿の収穫をしていく横島だが、収穫量は結構多くふと前の住人にも送ってやろうかと言い出す。

前の住人はすでに麻帆良には住んでないが、近所には長年親しく付き合った友人が残っており噂程度にその後の話は聞いている。

今まで毎年楽しみにしていたのだろうと思うと、きっと喜ぶだろうと思うのだ。

結局横島は近所の人に前の住人の現住所を聞き、庭で採れた柿を送ってやることにする。



さてその日のバイトは明日菜が朝から夕方までと、さよが午前中でのどかが午後であった。

横島と図書館探検部のメンバーは徹夜開けなので、この日のバイトは明日菜が中心になりさよが午前中手伝いに入り午後はのどかである。

基本的にさよはバイトのメンバーではないが、木乃香達が忙しい時などは代わることはあった。

というかさよとタマモにとって店は自宅であり、バイト云々関係なく忙しい時は手伝ってくれるのだが。


「噂以上ですね」

そんなこの日は日曜であり午前中から学生が多く賑やかな店内だったが、その人物と連れが訪れると少し空気が変わる。

彼女は新堂美咲、ご存知体育祭での木乃香の対戦相手だ。

ちょうど店に居た客達はほとんどが彼女を知っており、商売敵とも言える彼女が来たことで驚きの表情を見せた者もいる。

だが彼女は普通に昼食を食べに来ただけだった。


「美食系サークルの間じゃ結構有名な店だよ。 最近よく見かけるこのカレーも本家本元はここだからな」

大学生らしき友人数人と訪れた新堂は喫茶店らしい軽食を頼んでいたが、友人達は麻帆良カレーを頼んでおり店に何度か来たことがある人物である。


「この店、報道部以外のテレビや雑誌の取材は断ってるって話だしな。 昨日の料理大会の特集に出てビックリしてた奴いたよ」

一緒に来てる友人も料理に詳しいらしくいろいろ話をしているが、彼らは昨日地元麻帆良のケーブルテレビで放送された体育祭の料理大会の特集の話をしていた。

体育祭でも特に注目を集める料理大会は大会前から有力選手に密着しており、大会後も追跡取材をしている。

体育祭直後に店を訪れたクレーマーから豪徳寺が店を守ったこともあったが、あの時偶然居合わせた取材の放送が昨日あったのだ。

番組は主に超や新堂などが取り上げられていたが、木乃香に関しても結構取り上げられており木乃香の大会後のインタビューも放送されている。



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