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平和な日常~秋~2

さて昼食が終わると少女達は午後の競技に戻っていくが、横島とタマモは明日菜達の応援のために麻帆良総合スタジアムに来ていた。

応援に関しては予定を組んでる訳ではなく木乃香の料理大会以外は決まってないが、家族の応援がない明日菜を優先している。


「凄い競技場だな~」

「ひとがいっぱいだ」

そんな訳でスタジアムに入った横島とタマモだったが、近代的で大きなスタジアムに二人ともまるで田舎者のように驚いていた。

スタジアムに反響するような声援の声や人々の熱気は、経験しなければその凄さは分からないかもしれない。

観客席に関しては学園の各学校単位に事前に割り振った集団応援席と、個人に安価で販売した個人応援席がある。

横島とタマモはさよの保護者用の入場券があり、それで入ったので女子中等部の応援席を目指していた。


「おっ、君達も来たのかね?」

「はい、三時から木乃香ちゃんの料理大会があるのでそれまでですけどね」

横島達が2-Aの観客席に到着すると何人かの少女達と、先程まで一緒だったあやかの父と千鶴の父が揃って来ている。

応援席は結構混んでおり横島はタマモを膝の上に乗せる形で座れるが、なんと隣はあやかの父であった。


「あすなちゃんがんばれー!!」

横島達が席に座ると、ちょうど明日菜が走り幅跳びの種目に参加してる最中である。

タマモは両手をいっぱい降り精一杯の声を出して応援の声を上げた。


「流石に……って聞こえたらしいな」

元気いっぱいに応援するタマモに横島は流石に聞こえないだろうと言おとしたが、どうやら聞こえたらしく明日菜はタマモに返事を返すように手を振ってくる。

応援の声は会場のあちこちから聞こえており、正直普通の人間の聴力では聞き取れない距離なのだが明日菜は聞こえていた。


(潜在能力の高さが分かるな。 あれでほとんど潜在能力眠ってるんだからたいしたもんだわ)

タマモに手を振った明日菜はそのまま幅跳びの競技に挑戦するが、かなりの好成績を叩き出している。

聴力といい運動のセンスといい、明日菜の高い潜在能力が横島にはよく見えていた。


「明日菜ちゃんは綺麗になったね。 初めてうちに来た頃が懐かしいよ」

タマモはいつの間に横島の膝の上から降りて立ち上がって応援していたが、そんな時あやかの父が少し懐かしそうに明日菜を見つめ横島に昔話を始めた。


「私にはあやかともう一人娘が居るが、初めてうちに遊びに来て、娘と本気で喧嘩した子供は明日菜ちゃんだけなんだよ。 大抵の子は来る前に親に失礼がないようにときつく言い付けられてたりするし、子供ながらにあの家に来ると萎縮しちゃうからね」

少し懐かしそうにしながら昔を語るあやかの父は、感慨深げな表情になり言葉を続ける。

あやかの父も資産家の家に生まれてなんの不自由なく育ったらしいが、一番苦労したのは人間関係だったと語っていく。

雪広家に来る人間は子供にすら気を使い、なんとか気に入られようとする人間が多いらしい。

そして親戚や友人でさえ疑わねばならぬ時もあり大変だったと語る。


「まさかうちに来て娘と本気で喧嘩する子供が居るとは思わなかったな。 それで父が明日菜ちゃんを気に入っちゃってさ」

今思い出しても可笑しいのか思わず笑ってしまったようだが、明日菜は雪広家の人々に愛されてるのだと横島はシミジミ感じる。



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