平和な日常~秋~2

その頃明日菜が心配する横島は、タマモと美砂達と一緒に大学部の近辺で行われるミニ四駆大会に来ていた。

ミニ四駆は子供の遊びじゃないかと考えていた美砂達だが、会場の年齢層は割と広く小学生以外にも大学生がかなり多い。

会場には大学部や小等部などの複数のミニ四駆系サークルの旗や垂れ幕が目立っており、多くの人がセッティングを調整したりしてピリピリとした空気が流れている。


「なんか怖いわね」

「場違いって感じ?」

会場は明らかに女性の数が圧倒的に少なく、美砂達を連れた横島はやはり目立っていた。

横島にはそんなつもりはないが、端から見ると横島は女の子を侍らせてイチャイチャしてるようにも見える。

大学生などはそんな横島に嫉妬混じりの冷たい視線を送っていた。


「ちいさいくるまがいっぱいだ!」

「これから勝負するんだぞ」

周りから集まる視線の数々にも、横島はまるで全く気付かぬように相変わらずの様子である。

同じく視線を気にしてないのはタマモと桜子であり、桜子に至っては横島の腕に抱き着く形で堂々としていた。

どこからか女の敵だとかの呟きが聞こえるが、そんな状況を理解した美砂は桜子とは反対側の腕に抱き着く形でわざと見せ付ける。


(結構いい性格してるよな)

桜子はあまり深く考えてないらしいが、美砂は状況を楽しんでおりわざと見せ付けているのだ。

タマモを肩車して左右から中学生に抱き着かれる横島の姿は、さぞや見物であろう。

三人の中では割と常識的な円は若干苦笑いを浮かべてそんな横島達を見ているが、止める気はないらしい。



「あいつ確か中等部の千鶴ちゃんの彼氏じゃなかったか?」

「俺は麻帆良祭の写真の美少女の彼氏だって聞いたぞ」

「えっ、刀子先生の彼氏じゃないのか!?」

一方横島を見て嫉妬めいた視線を送っていた大学生達は、それぞれに横島の噂を口にするが支離滅裂であり全て違う相手だった。

彼女として噂が一番多いのはやはり木乃香と千鶴であり、意外なことに刀子も結構噂になっていたらしい。

これに関しては単純に女性陣の大学部での知名度も関係している。

麻帆良祭で写真が有名になった木乃香とストーカー事件で有名になった千鶴と教師の刀子が大学部では知名度が高く、噂が広がりやすかったとの事情があった。

ちなみに文化系サークルや飲食系サークルでは夕映も結構噂になっているし、明日菜の新聞配達の地区では明日菜と横島が噂になっている。

大学部も女性ならばもう少し横島の事情を知っているのだが、男性陣は根も葉も無い噂レベルが多く信じてる者も少なくない。


「あんな男のどこがいいんだ?」

「雪広家の隠し子らしい」

「あれ俺はどっかの国の王族だって聞いたぞ」

「いや、あの顔はどう見ても日本人だろ」

嫉妬を燃え上がらせる大学生達だが、その噂は横島が考える以上に支離滅裂であり目茶苦茶だった。

そんな彼らの話を聞き耳を立てて少しだけ聞いていた横島は、そっと彼らの声が聞こえないように調整をする。

横島自身の精神的な安定の為にも知らなくていいことだった。

1/100ページ
スキ