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平和な日常~春~

かつて真祖の吸血鬼の存在は、メガロメセンブリアにとって非常に都合がいいモノだった

悪だと決め付けるだけで魔法界のみならず人間界である旧世界までにも、密かに魔法使いを派遣する口実が得られたのだから

全ては自分達を正義としてメガロメセンブリアの認定のマギステル・マギを、魔法界各地や人間界各地に派遣する為のエサだったのだ


そしてナギが麻帆良にエヴァを預けた真の理由はエヴァを更正させるのではなく、メガロメセンブリアから守り完全なる世界との戦いに巻き込まないためであった

ここまで聞くとナギが良く感じるが、問題はこの後である

力任せに適当に魔法をかけた結果、誰にも解けぬ呪いのままにエヴァを麻帆良に括るハメになったのだ

ナギ自身はいずれ自分が解けばいいと考えていたようだが、結果として誰にも解けぬ呪いはエヴァに永遠の苦しみを与えている

近右衛門は全てを理解しているからまだいいが、将来的にエヴァの扱いが問題になるのは明らかだった


「蟠桃の地下のアレもあるしのう。 加えて息子まで…… 奴はワシに死ぬまで働けと言う気かのう? いい加減引退して娘の元でのんびり暮らしたいのじゃが……」

ナギにより持ち込まれた問題の数々に、近右衛門はため息をはくしか出来ない

本来ならば東と西の本格的な和解を進めて、さっさと引退したいのだ

それが出来ないのはナギ達により持ち込まれた問題が解決する見込みが全く立たないためである

近右衛門自身はナギに感謝もしてるが、それ以上に文句を言いたいことが山ほどあった

親や友人でもないのに厄介事ばかり押し付けられたのだから当然だが……

結局近右衛門はネギの受け入れの結論が出ぬまま、イロイロと考え込んでしまう

正直ネギの将来よりも、近右衛門には日本や関東と関西の魔法組織の未来の方が心配だった

孫娘の木乃香や明日菜の未来を守る為にも、余計な揉め事の種は持ち込みたく無い


しかし問題はネギが安全に修行して生きて行ける場所が、数えるほどしかないと言う事実だろう

父親と母親の負債を背負って生きねばならない幼い子供が、近右衛門は不憫で仕方なかった



その後近右衛門は苦悩の末にネギの受け入れを一度は断るのだが、他のネギの修行先の候補に上がった場所もまたどこも受け入れを拒否してしまう

メルディアナ学校長がネギの修行先に選んだ場所はどこもメガロメセンブリアの権力が及ばない魔法組織なのだが、過去に村を襲われた件を問題視してどこも受け入れに消極的だった

ナギや赤き翼の功績はもちろん有名なのだが、反面で好き勝手に行動してあちこちから恨まれてることも魔法組織の上層部は知っている

加えて母親の素性を知る者は、間違っても受け入れたいなど考えて無かった

将来の英雄候補はどこも欲しいのだが、メガロメセンブリアに目を付けられるような厄介者は誰も欲しくない

結局ネギの修行先は、行くあてのないまま暗礁に乗り上げることになる

人間界の魔法組織のトップのほとんどは、20年前の魔法界の大戦に巻き込まれて嫌気がさしていた

正直魔法界絡みの問題には、関わりたくない者がほとんどなのだ

誰もがネギには同情し将来を期待するが、歴史に表沙汰にならない赤き翼の負の面を考えると誰もが関わるのを避けてしまう

近右衛門にしろ他の魔法協会のトップにしろネギが天涯孤独で生きる場所すらないなら考えも違うのだろうが、それなりに力のある祖父が健在な以上自分で何とかして欲しいと言うのが本音であった
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