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平和な日常~秋~

その日も賑やかな一日が終わり店の後片付けをようとしていた横島だったが、そんな時間を見計らってやって来る客も居る。


「ワインとつまみ」

ぶっきらぼうな口調で最低限の言葉しか発しないその客は、マジックアイテムで大人の姿に化けたエヴァだった。

一学期の頃は午前中に店に来ていたエヴァだが、夏休みに入ると閉店間際の人が居ない時間を狙って来るようになったのだ。

やはりクラスメートには出来るだけ会いたくなかったのだろう。


「はいよ。 俺は店閉めて裏で明日の仕込みしてるから用があれば呼んでくれ」

最近は週に一~二回の割合で来ては、指定席と化してる店の隅の席で一人で飲んでいる。

横島も時々は囲碁の相手をするが、基本的には一人で飲むのが好きらしい。

良くも悪くもエヴァを特別扱いしない横島なだけに、店を閉めて後片付けや明日の仕込みを始める。



「ポー!」

静かに音楽が流れる店内では、エヴァが何を見る訳でもなく窓の外を見つめながら飲んでいたが。

その時エヴァの存在に気付かなかったハニワ兵が、店の入口から入って来て厨房の方に歩いていく。


「ポッ……ポーー!?」

しかしハニワ兵はふいに視線を感じ店内を見つめると、バッチリとエヴァと視線が合ってしまう。

慌てて人形のふりをするハニワ兵だったが、最早無駄な抵抗だった。


「お前何やってんだ?」

店内では何とも言えない空気が支配してしまうが、ハニワ兵が来たことに当然気付いている横島が厨房から出て来るもハニワ兵はまだ人形のふりを続ける。


「ああ、あの客はいいんだよ。 でも本当に気をつけろよ」

器用に冷や汗を流してるハニワ兵に横島はまたドジってエヴァに見つかったのだと理解するが、特に問題にしないで笑っているだけだった。


「ポー……」

何度も謝るとそのまま厨房に入っていくが、彼は店が終わったので後片付けの手伝いに降りて来たのだ。

厨房や地下など店のフロア以外は他のハニワ兵も異空間アジトから来て掃除をしているが、あのドジなハニワ兵はこちらの専属な為に二階から歩いて来たのが問題だったらしい。


「ゴーレムか? それにしては随分と感情が豊かだな」

一方まるでコントのようなドジなハニワ兵を見ていたエヴァだが、特に驚きもしないで観察していたようである。

実はハニワ兵の存在は一学期の終業式の時にさよがちらりと漏らしていたので驚きはなかったが、ゴーレムのような容姿に不釣り合いの感情豊かなハニワ兵には多少興味を持ったらしい。


「似たようなもんだよ。 感情が豊かなのは作った奴の趣味なんだろうな。 あいつ時々ドジるんだ」

ゴーレムにドジをするほどの感情を持たせた製作者にエヴァは多少興味が惹かれるが、実際は魔法関係者にはその手の変人も多く特別珍しい訳ではなかった。

ただ何故ハニワなのかとは思うが、製作者と横島の趣味が悪いのだろうと考えたのみで特に尋ねることもしない。


「そのうち痛い目に合うぞ」

「大丈夫だって」

相変わらず魔法の秘匿に関して危機感がない横島にエヴァは呆れた表情をするが、横島はこの日もいつもと同じく楽観的に笑っているだけだった。



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