平和な日常~秋~

さて九月も一週間を越えると、学生達は夏休みの余韻も消えて学校中心の生活に戻っていた。

さよの毎日の弁当が2-Aの少女達を越えて近隣のクラスでも話題になるなど変化もあるが、特に大きな問題になってる訳ではない。


「えっと、頼まれていたのは……」

この日いつもと同じく授業を終えて学校を後にしていたさよと木乃香達は、寮の近くの本屋に立ち寄っていた。

彼女達は横島から頼まれた雑誌などを探しつつ、自分達が好きな雑誌も何冊か購入する。

合計で八冊ほどの雑誌を購入した木乃香達だが、これらは横島の店に置かれる本だった。

喫茶店には必要不可欠とも言える雑誌類は、開店以来ずっと木乃香達が選んで買っている。

横島の店では麻帆良学園報道部で発行している麻帆良スポーツや全国紙の新聞を置いており、雑誌類も結構豊富に種類を揃えていた。

ただ普通の喫茶店と違うのは雑誌の種類が週刊誌とかよりもファッション雑誌などが多いことか。

元々店の客層が偏ってるだけに、主に女子中高生が読む雑誌が大半である。

客の要望に応じて増やしたり減らしたりしているが、基本的にはこれも木乃香達に任せっきりだった。


「横島さんやっぱり車を買うつもりなのかしら?」

雑誌を八冊も買えば結構重いので分けて持っている木乃香達だが、明日菜は今日買った本に中古車販売雑誌があったことで横島が車を買うのか少し気になったらしい。

前々から横島が時々コブラについて不便だとぼやいていたのは木乃香達も知っていることから、いよいよ車を買うのかと考えてしまう。


「いい加減、借りた物は返した方がいいと思うです」

麻帆良でコブラなんて乗ってるのは恐らく横島だけである。

半年近くも借りっ放しな状況に、夕映は早く返すべきだと言う。

壊したりしたら大変だし、世間一般的なモラルから言えば半年も借りたままなのはどうかと思うようだ。


「あの車目立つのよねー。 麻帆良祭の準備の時に新聞配達手伝って貰ったら、凄い話題になっちゃったわよ」

借りた物は早く返すべきだと言う夕映に木乃香達は頷くが、ふと明日菜はコブラについての思い出を語る。

麻帆良祭の準備の時に一度だけ横島が新聞配達に乗せて歩いたら、オープンカーの外車で新聞配達をしてると結構な騒ぎになったのだ。

同じ新聞配達をしている人や明日菜が日頃配ってる家の人達に、どんな関係かと聞かれまくったらしい。


「あんな車で新聞配達する人は、世界でも横島さんと明日菜さんだけでしょうね」

横島も明日菜もあまり深く考えないタチなので当時は気にしなかったが、コブラを知ってる人間からすると衝撃な場面だったのかもしれない。

横島の場合は朝一や市場にもコブラで行くので、当然もっと目立っているが。

そもそも横島本人はあまり目立たずに静かに暮らしてるつもりだが、周りからすると目立ち過ぎだと言いたくなるほどである。

頭のネジが何本か抜けてるだろうと噂されるのは当然だった。


「どうせなら屋根がある車がいいですね~ これからの季節は寒くなるので」

一方のさよはコブラが目立つ件はイマイチ理解出来ずに、ただ単純に寒いから屋根がある車にして欲しいとしか考えてない。

結局彼女達は横島が次に車を買うなら、もうちょっと普通の車にして欲しいという意見で一致する。



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