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平和な日常~秋~

一方学校が始まると横島の店はやはり静かになっていた。

近所の住人や社会人なんかの客は来るが、当然中高生のように騒ぐ人は居るはずがない。


「あれ? 始業式って弁当要るのかな?」

さよを送り出し朝のランチの時間が終わると横島は一息つくが、この時横島はようやく今日は弁当が要らないのではと気付く。

今朝は昨日の納涼祭の後片付け終わりにそのまま準備したので深く考えてなかったが、よくよく考えると今日は午前で終わりなのだ。


「……まあいっか」

必要ない弁当を持たせたかなと考える横島だが、ないよりはある方がいいし最悪は帰宅してから食べればいいからと気にしないことにする。

そのまま学生が居ない店内では、横島が久しぶりの暇な時間をただ何をする訳でもなくのんびりと過ごしていく。



「あれ、さよちゃんお弁当持って来たんだ」

「はい、横島さんが持たせてくれました」

「あの人もどっか抜けてるのよね~」

そして始業式が終わった2-Aの教室では、間違って弁当を持って来たさよの周りに少女達が集まっていた。

勉強を教えたり料理をしてる時の横島は凄い人だなと感心する少女達だが、どっか抜けているのもよく理解している。

きっと横島がさよの転校を心配したりして間違えたのだろうと教室は爆笑に包まれるが、それと同時にどんな弁当なのかと中身にも少女達の興味が移っていく。


「うわ~、可愛いお弁当ね」

どうせ今日はもう帰るだけだからと弁当の中身を見せてと騒ぐクラスメートに、まだ中身を見てないさよ自身も楽しみにしながら弁当を開けると、クラスメートの少女達からは感心というか驚きのような声が上がる。

なんと弁当全体が、ひまわりの花に見えるように盛り付けられていたのだから。

流石にそれを予想した者はいなかったらしい。


「そういえば、横島さんちょっと前から主婦向けの雑誌見てたわね」

横島は気合いが入り過ぎだと感じる少女達だったが、明日菜はふと最近横島がお弁当の特集が組まれた主婦向けの雑誌を見ていたことを思い出す。


「そやな~。 ウチも中学生のお弁当はどんなのがええかって、何度か聞かれたわ」

実は横島が弁当のデコレーションに凝った理由は、木乃香にもあったりする。

二学期からさよの弁当を作るからと、横島は最近の女子中学生の弁当の傾向などを調べていたらしい。

もちろん木乃香達にも何度か聞いたのだが、その際に木乃香は自身が見た目も考えてることや可愛い弁当を作るようにしてるとかアドバイスした結果も影響している。

とにかくさよが恥をかかないようにと気合いを入れた横島だったが、少々やり過ぎだったようだ。


「一口ちょうだい!」

みんなが弁当に感心する中まき絵が味見もしてみたいと言い出し一口食べると、それに続いて次々に味見をしたいという少女が名乗りを上げていった。

どうせ後は帰るだけだからいいよねと半ば遠慮がなくなった少女達は、瞬く間にさよの弁当を味見で完食してしまう。

結局さよが食べれたのは最後の一口だけである。

そのままさよはクラスメートのみんなと一緒に帰るが、明日からの弁当はどうなるのだろうとの話に華が咲いていた。


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