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平和な日常~夏~3

さて夜が更けた頃には協賛を含めた大まかな概要が決まり横島達はある程度落ち着き、後は大学部を中心にした祭り慣れした者達が準備をするだけであった。

横島の店ではタマモはひと足にさよに付き添われて寝るが、横島自身は深夜になってもまだ宿題をする者の為に店をあけたままである。

本来ならば明日の夜までに宿題を終わらせるはずだった宿題が終わってない少女達だが、予定外のお祭りに半日早く明日の昼までに宿題を終わらせる為に夜遅くまで頑張っていた。


「もうちょっとかな」

そんな慌ただしかった準備が一段落した店内ではまだ十人ほどの少女が宿題をしており、木乃香達のみならずあやかや千鶴や何故か刀子までが教えている。

横島は日付が変わる頃になると夜食でも作ろうと厨房に行き、余っていた食材と庭の夏野菜で夜食を作っていた。


(作る側になって始めて分かることもあるか……)

コトコトと煮込まれる鍋を見ていた横島は、ふと昔のことを思い出してしまう。

かつての美神事務所では深夜の仕事が多く、よく朝まで徹夜で張り込みなどさせられていた。

夜の仕事の時などはおキヌが夜食や弁当をよく作ってくれていたが、栄養や消化に気を使った物が多かったことに今更ながらに気付く。

何故あの時すぐに気付いてやれなかったのかと考えると、自分が無性に情けなく感じるが今更なことである。


「マスター、お腹空いた!」

横島が過去を思い出していたのは僅かな時間だったが、フロアからお腹が空いたらしいまき絵が食べ物を求めて厨房に入って来た。


「そろそろ来ると思ったよ。 すぐ出来るから待ってろ」

喫茶店のマスターというよりは母親にでもなった気分になる横島は、基本的に全く遠慮がないまき絵に何故か笑ってしまう。

あまり深く考えてないことは言うまでもないが、図々しいまでの天然な態度はかつての自分自身を見てるようで少しおかしかったらしい。


「おおー、野菜のスープある」

「あら、ミネストローネですね」

完成した夜食を食べて勉強を休憩する少女達だったが、まき絵や古菲は夜食のミネストローネと一緒にご飯をバクバクと食べている。

木乃香達やあやかや千鶴なんかはミネストローネとパンを少しだけを食べており、こちらは夜食なだけに食べすぎないように気をつけているようだ。

もっとも横島もそんな年頃の少女達に合わせて、野菜がメインのミネストローネを作ったのだが。

今回は通常よりも少し長く煮込まれており、消化がいいようにも気を使っている。

まあ本格的に作るにはスープの元になるブイヨンから作らねばならないが、流石に今回は市販の固形スープの素を使っていた。

いくら横島でもそこまで暇ではないし、ブイヨンから作れば夜食ではなく朝食になってしまうのだから。


「夜食にこんな料理作ってくれるお母さん欲しいな~」

「誰がお母さんだ。 誰が……。 そもそもミネストローネはイタリアの料理だけど、そんな難しい料理じゃないぞ。 今度お母さんに頼めば作ってくれると思うが。 満腹感がある割には太らないし、夜食にはちょうどいいだろ」

食事が続く店内では何故か横島がお母さんのような扱いをされるようになり笑いが起こってしまうが、横島がいじられるのはいつものことだった。

そのまま宿題を忘れて騒ぎたいてテンションが上がる少女達だったが、あやか達に止められて渋々宿題に戻っていく。

どうやら今夜はまだまだ宿題が続くらしい。



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