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平和な日常~夏~3

さて緊張感漂う中で試食が始まるが、木乃香達からすると正直感想を言いにくい雰囲気だった。

別に雪広グループ関係者に悪気はないが、緊張した雰囲気の中で中学生の少女が大人に感想を述べるのは少し勇気がいることである。


「これいくらで売るんっすか?」

この日の試食はインスタント食品や冷凍食品などが中心だったが、結構美味しい物ばかりだった。

まあ外部に試食として出す訳だから、開発者もそれなりに自信があるのだろうし全体的に完成度は高い。

横島達がすることは素直に意見を言えばいいだけなのだが、ただ美味しいという意見では役に立たないので試食も簡単ではないようである。


「インスタント食品って久しぶりに食べたわ」

「ウチらインスタント食べへんからな~」

「そもそも狙う購買層が男性でしょうからね」

緊張感漂う雰囲気に少しずつ慣れて来た木乃香達も徐々に意見を口にするが、日頃インスタント食品などあまり食べない彼女達としては新鮮な感覚らしい。

ただそんな彼女達から出た意見は野菜が少ないことや、肉の独特の臭みが少し気になるなど女の子らしい意見だった。


「これもさ、ひと手間加えると味が変わるぞ」

木乃香達の意見に雪広グループ関係者が少し落胆の表情を見せるが、そもそも木乃香達の意見はどちらかと言えば辛口である。

日頃横島の料理を食べ慣れてる上に、彼女達は一般的なインスタント食品のレベルをあまり知らないのでどうしても辛口になるのだ。

そんな木乃香達の様子に横島は店に残っていた野菜などを使って、インスタント食品にひと手間加えてアレンジしてみせる。

具体的には野菜を足して調味料で味を整えただけなのだが、そのひと手間だけで料理が別物のように変わってしまう。


「インスタントにしては完成度が高いからな。 食べる時にひと手間加えると問題はすぐに消えるんだが……。 後は原価と大量生産の段階でどこまでやれるかだろうな」

横島がアレンジした料理と試作品を食べ比べる木乃香達や雪広グループ関係者だが、味の違いは一目瞭然である。

特に雪広グループ関係者は横島に了解を取り、アレンジのレシピをメモして開発に生かしたいらしい。

この後も予定していた試食は続くが、何故か木乃香達の意見に合わせるように横島が改良点をアドバイスする形が続いていく。

横島としては前回のカレーのレトルト化の時に原価の制限や大量生産の苦労を知ったので、出来るだけそれに合わせたアドバイスを悩みながらしていった。

最終的に意見やアドバイスを採用するかしないかは雪広グループの判断なので、正直横島は結構気楽にアドバイスしていたが。


「ごちそうさまでした」

一方タマモとさよは相変わらず試食の意味をあまり理解しておらず、普通に食事として食べていた。

もっともタマモの場合はあまり好みに合わない時は表情に出るので、雪広グループ関係者はタマモの表情には注目していたようである。

何はともあれ今回の試食は無事に終わり、雪広グループ関係者は次回の試食をお願いして帰って行った。



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