平和な日常~夏~3

「あの、学園側は問題をどうするつもりなのでしょうか?」

横島が興味ない様子なことに少し困った様子の刀子に、夕映は横島はこれ以上考えないだろうと自ら学園側の対応と考えを尋ねる。


「それは横島君と那波さんの意見を聞いてから検討する予定よ。 こう言っては何なんだけど、那波さんのご実家は麻帆良学園を長年支援してくれてるわ。 那波さんのご両親は学園側に対応を一任して頂いたけど、学園側としては那波さん個人の意見も聞きたがってるの」

夕映の問い掛けに刀子は少し言いにくそうに学園側の考えを伝えるが、千鶴が那波重工の娘であることが問題を若干だが難しくしていた。

将来的に那波グループを継ぐかもしれない千鶴に、妙な蟠りや不信を残したくないと考える学園関係者は少なくない。

現状の麻帆良学園は雪広・那波両グループとの関係は絶対に断てないほど親密になっているのだ。

麻帆良祭の件に続き未遂だが二度目の事件を起こした彼らを問題視する関係者は予想以上に多かった。


「私も学園にお任せします」

刀子の説明に千鶴は少し複雑そうな表情を見せながらも学園に任せると告げる。

学園側は千鶴に気を使ったのだが、正直千鶴本人はあまりその手の特別扱いを好まない。

加えて下手なことを言って余計に横島が恨まる事態も避けたかった。

無論彼らの行為には怒りも感じるが、そんな彼らを止めようと動いた多くの人達が居るのも理解している。

結局は学園側の規則と判断に任せるべきだとの結論に達したようだ。


「あの……、差し出がましいようですが、今回の問題には横島さんが甘く見られてることも原因ではないでしょうか。 彼らが今後下手な行動を取らないようにきつく釘を刺す必要があると思います」

横島と千鶴は問題への介入を避けると言うが、それに反対に近い意見を述べたのは夕映だった。

夕映は横島がストーカー連中にかなりナメられてると感じており、それが問題を悪化させた一因だと考えてるらしい。


「綾瀬さんの意見も一理あるわね」

基本的には部外者であると夕映が遠慮がちに今後への新たな対応が必要ではと言うと、刀子はその意見に賛同する。

女子中高生や魔法関係者は横島の料理の腕前を知ってるので違うが、男子高等部付近だと正直横島の知名度は低い。

ストーカーは横島ならば大丈夫だろうと考えたが故に逆恨みした可能性も決して低くはなかった。


「今回は問題ないって。 未遂だしな」

「しかし甘い処置で終われば事態が悪化する可能性も。 そもそもこの手の問題は本当にデリケートで難しいですから……」

「心配すんなって。 あんな連中その気になればどうとでもできるよ」

真剣味が足りないというか危機感が薄い横島に夕映は終始心配そうだが、横島は逆にそんな夕映を宥めていく。

とりあえず今回は学園を信頼して任せようと話は纏まるが、夕映のみならず木乃香達も千鶴も横島が大物なのか馬鹿なのか判断に迷うことになる。


(余裕なのかしら? フェイクなのかしら?)

一方横島が魔法関係者だと知る刀子は横島の真意を掴み兼ねていた。

そもそも刀子は横島の戦闘力は知らないが、術には長けてるとは理解している。

以前に一度だけ魔法料理を食べた上、さよやタマモの正体の隠匿などを見ればわかることだ。

横島の態度がいつでも対処できるとの余裕なのか、それとも木乃香達を安心させる為のフェイクなのか刀子も見抜けない。

それに横島がいつまでもやられっぱなしでいるかなど、誰にも分からないことだった。

刀子は横島が下手に動く前に学園側で問題にケリを付ける必要があるだろうと考えていた。



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