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平和な日常~夏~2

「タマちゃん、ただいま~」

お盆休みも過ぎると麻帆良には故郷に帰省していた学生達が戻り始める。

そんなこの日は一週間ほど京都の実家に帰っていた木乃香が麻帆良に戻って来たらしく、お土産と共に横島の店にやって来ていた。


「おかえり~」

久しぶりにやって来た木乃香の姿にタマモは嬉しそうに駆け寄り、木乃香はそんなタマモを笑顔で抱き上げる。

一見すると何故か仕事帰りのお父さんに駆け寄る子供みたいな光景だが、もちろん本人達は全く気付いてない。


「お帰り、新幹線混んでて大変だったろ。 ところであれ本当に貰っていいんか?」

「もちろんええよ。 あれお父様とお母様からのお世話になってるお礼なんよ」

タマモと数日ぶりの再会を喜ぶ木乃香を横島や明日菜さよも迎えるが、横島は木乃香に一つの確認をする。

実は今朝、店に京野菜の詰め合わせが届いていたのだ。

しかも量はダンボール二箱分ほど届いており、京野菜と一緒に木乃香の母からのバイトに関するお礼の手紙も入っていた。

見ただけで惚れ惚れするような達筆な手紙に、横島はもちろん驚き返事をどうするか少し悩んでいたりする。


「教えて貰った料理、お父様もお母様もほんまに喜んでくれたんよ~」

そのまま話は届いた野菜から木乃香の帰省中のことに変わるが、今回の帰省で木乃香は両親に横島に習った料理を何度か振る舞ったようだ。

中でも麻帆良祭で作った麻帆良カレーは帰省前に横島がオリジナルスパイスを木乃香に持たせており、実家で家族や父の仕事仲間の巫女さん達にも好評だったと嬉しそうに語っている。

ちなみにオリジナルスパイスは雪広グループや超包子の販売用スパイスとは微妙に違っており、実際に麻帆良祭で出した百パーセントオリジナルのスパイスだった。

一応超包子や雪広グループにはスパイスのレシピは渡してあるが、スパイスの産地などによる細かな味の違いを百パーセント再現出来るのは今のところ横島だけである。

木乃香はスパイスさえあれば自力でカレーを作れることから、今回の帰省で両親や幼い頃から世話になった家の使用人なんかにも振る舞いたかったらしい。

他にもスイーツや洋食などを中心に料理を振る舞って、みんな喜んでくれたと嬉しそうである。


「横島さん来てから木乃香の料理の腕前上がってるもんね」

「元々料理の基礎が出来てて上手かったからな。 正直教えた料理なら普通に店に出せるレベルだよ」

本来は木乃香は占いの弟子入りをしたかったのだが、何故か料理にシフトしてしまい最近は本人もそれを楽しんでいた。

加えて細かな指導を的確に教えている横島の言うことを素直に聞く木乃香は、僅か数ヶ月で周りが驚くほど料理が上達している。

まだまだ本格的に作れる料理が少なく経験も足りないだけに未熟さはあるが、同じく春から働いてる料理人見習いと比べれば雲泥の差があった。

はっきり言うと横島の的確過ぎる教え方も普通では有り得ないが、それを吸収して生かす木乃香の才能も普通ではない。

実際に店のメニューを横島とほぼ同じ味で出せるのは木乃香しかいなく、店にあるメニューならばプロにも匹敵している。

毎日一緒の明日菜ですら驚くほど料理が上達しているだけに、両親の驚きようは相当だったようだ。

ちなみに近右衛門が娘夫婦にそんな木乃香の料理を自慢していたのが、今回帰省した時に料理を振る舞うことになった原因だったりする。



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