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平和な日常~夏~2

「ねえ木乃香、今日お店休みって本当!?」

一方中等部の女子寮では横島が突然店を休んだことで少し騒ぎになっていた。

めったに店を休まない横島が突然休んだことで、何かあったのかと木乃香に事情を聞きに来る人が朝から絶えないのだ


「うちも今朝連絡もらったんやけど、知り合いの子が遊びに来たからタマちゃんと一緒に東京見物連れて行ったらしいんよ」

朝から何人にも同じ説明を繰り返している木乃香は、僅かに苦笑いを浮かべて聞きに来た子に同じ説明をする。

横島には悪気はないがめったに休まない横島が夏休み初日に休んだ結果、妙に注目を集めてしまったらしい。

中には店を辞めるのと真顔で心配して聞きに来た人も居て、またもや勝手な噂が一部で流れてたようだ。


「まったく、部屋のドアに張り紙でもしといたら?」

そんな朝から何人もの人が入れ替わり立ち替わり部屋にやって来る状況に、何度も起こされた明日菜は若干眠そうにしながら愚痴をこぼす。

元々開店当初からバイトをしていて麻帆良祭では恋人のような写真を撮られた木乃香は、すっかり横島の関係者にされている。

と言うかよく事情を知らない人の中には、木乃香が横島の恋人なんだと本気で思ってる人も結構多い。

実際あの写真だけを見て木乃香や横島をよく知らない人間は、恋人にしか見えないというのが正しかった。

まあ中等部では横島は有名なので恋人だと勘違いしてる者は少ないが、案外隠れて付き合ってるのではと疑ってる人は居たりする。

そんな訳で少し話が逸れたが、突然横島が店を休んで心配した者や何かあったのかと興味本位な者達が木乃香の元を次々と訪れてるらしい。


「それはさすがに可哀想や。 みんな横島さんを心配してるんよ」

やって来る人のほとんどは興味本位な人なのだが、木乃香はみんなが心配して来たと割と本気で信じていた。


「そう? 私には面白がってるようにしか見えないけど……」

基本的に人を疑うことをしない木乃香は本当にお人好しだと、明日菜はシミジミ感じる。

明日菜自身もそれが木乃香の長所なのは理解してるが、朝から何度も同じ説明をする気が知れなかった。



「うわ~、人が多いですね」

同じ頃横島達は東京都内に到着していた。

電車を乗り継ぎとりあえずは定番の観光でもしようかと適当な駅で降りるが、人の多さや歩く流れの速さにさよとタマモは驚いてしまう。

無論麻帆良も朝の通勤ラッシュなどは混雑するし人の多さは当然あるが、どこか日本らしくない麻帆良と東京では同じ混雑でも雰囲気というか空気がまるで違っていた。

加えて麻帆良の街にはほとんどないネオンや看板なども目をひいており、さよとタマモはどこか別世界に来たような感覚だった。


「どこに行きたい? 都内っても広いからな~ どのみち今日じゃ行きたい場所全部は無理だし、ゆっくり観光でもすればいいと思うんだが」

そんな一行だったが駅を出た横島は観光ガイドを見ながら、二人をどこに連れて行こうか迷っている。

よくよく考えてみると横島もこの世界の東京はあまり詳しくないのだ。

まあ前の世界の東京とそれほど違いはないのだが、横島自身東京見物をしたのは随分昔のことであり最近の注目の場所などは知らなかった。



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