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平和な日常~夏~2

千鶴に対し意味深な発言をした横島だが具体的な方法を語ることはなく、この日は緊急時用に横島の携帯番号を教えることに留める。

そして密かに土具羅に千鶴絡みの情報を送ってくれるように頼む。

実際に横島にはいくつか腹案はあるが、具体的な行動を起こす前に相手や状況の見極めはしっかりするつもりだった。

前回のように偶発的に起きた問題ならその場で判断して処理するが、時間があるならば下調べや裏取りは当然するようである。

仮にも中学生の女の子が関わる以上、横島は中途半端な行動をするつもりはないようだ。


「那波さん、元気出たみたいやね」

結局この日は困ったら連絡してくれとしか言ってないのだが、千鶴は先程とは打って変わり晴れやかな表情で個室を出て行く。

店番をしていた木乃香も多少気にしていたが、日頃から横島が相談に乗るとほとんどの場合は相談が終わると明るい表情になることからあまり心配はしてなかったらしい。


「いざという時に頼れるってわかったら、なんだかホッとしちゃったみたい」

ホッとしたような笑顔の木乃香に、千鶴もまたホッとしたような笑顔で答える。

現状では具体的な解決は何一つしてないが、正直千鶴は自身が思ってる以上にホッとした安堵感に包まれていた。

自分をきちんと理解して苦しい時や悩んでる時に手を差し伸べてくれる相手が居るだけで、精神的なモノが随分と変わってくるようだ。


「日頃の態度はアレですが、いざという時には頼りになる人なんですよね。 おかげで損もしてそうですが……」

僅かな時間話をしただけで精神的にだいぶ楽になった千鶴だが、横島の店ではたまに見かける光景だった。

日頃は頼りないというかチャランポランにも見える横島だが、横島を信じて頼って来る相手は不思議と晴れやかな表情で帰ることが多い。

相手は主に占いを信じるような女子中高生なのだが、最近は何故か恋愛相談や人生相談までしている。

横島自身は相変わらず占いが当たり過ぎないように気をつけているが、持ち前の面倒見の良さもあって悩む女の子をほっとけないらしい。

夕映はそんな横島に好感を感じているが、同時に随分と損をしていた来たのだろうと思うと思わず同情してしまうようだ。


「でも横島さんって人の心の隙間に入り込むから、気をつけないと……」

「アスナ、後ろ……」

そのまましばらく横島の話題を続ける木乃香達と千鶴などだが、途中から話は横島の女関係に変わる。

女性が苦手なのに女の子と仲良くなりたいらしく手が早いと誰かが言ったかと思えば、女の子と仲良くなっても友達以上は逃げるので中途半端に生殺しになるとか割と好き勝手にガールズトークに花を咲かせる。

そんな流れで明日菜が横島は人の心の隙間に入り込むのが上手いと口にした時、後ろにニコニコと気持ちのいい笑顔の横島が居たことに明日菜は気付いてなかったらしい。


「ほ~、心の隙間ね~ じゃあ明日菜ちゃんの心の隙間を狙ってみようか?」

「いや、あのね!? いい意味で言ったのよ!?」

ニコニコとした笑顔のまま明日菜に迫る横島に、明日菜は何故かうろたえて微妙に顔を赤らめてしまう。

必死に取り繕おうとする明日菜に横島や木乃香達は思わず笑ってしまい、結局話は流れてしまうがそれはよくあることだった。




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