真の歴史へ・その四

『行くわ!』

人狼への距離が10メートルを切ろうとした時、いよいよ横島達は行動を開始した

先手はルシオラでソフトボールほどの大きさの紫色の毒々しい丸い球を、人狼の上空目掛けて投げる

その毒々しい球は人狼の上空に到達すると突然破裂して、真っ白なモクモクとした煙りが凄まじいスピードで周辺に広がっていく



「なんだ、あれは!?」

一方オカルトGメンの一行は轟音に続き数キロ先の山々に突然広がる真っ白い煙りに、その場に立ち止まり事態の推移を見守るしか出来ない


「山火事かしら~?」

「違うのう。 あれは恐らく人為的な煙りじゃ」

「ドクター・カオス、追跡中の霊力反応の消失を・確認しました」

突然現れ山々を覆い尽くすような真っ白い煙りにも冥子はのほほんと火事かなと首を傾げているが、カオスは煙りが人為的な何かだと瞬時に気付く

そんなカオスの意見を肯定するようにマリアが感知していた人狼の霊力が感知不能になった事を告げると、美智恵を除く一同の顔に緊張感が増大する


「煙幕を用いた霊的結界の一種か? 確かGメンの装備にも似たような物があったが……」

「除霊用の薫煙剤じゃないの? 最近似たような煙りのアイテム結構あるわよ」

突然現れた白い煙りに西条と令子は原因を追求するが答えは纏まらない

西条が語っているのはオカルト版スタングレネードのような物で、霊力が込められた煙りを使う事により悪霊や妖怪の視覚や嗅覚を一時的に奪うアイテムだった

対オカルトテロの部隊には必須のアイテムであるが、無論効果範囲はそれほど広くなく山一つ以上をすっぽり包む効果などあるはずがない

対して令子が語るのは最近売り出された薫煙除霊アイテムの事で、浄化の効果がある煙りで強制的に除霊するアイテムである

まるでゴキブリ駆除の薬剤のような物からスプレータイプまで幅広く売られており、使用者の霊力が要らないという画期的な商品だったがいかんせん価格が馬鹿高い

加えてこちらも山一つを包むほどの威力があるはずがなかった


(やはり動いたわね)

この時事態を把握してるのは二人だけで、一人は昨夜警告を受けていたピートでもう一人はもちろん美智恵である

オカルトGメンでさえ知らないアイテムを用いて、八房の事件に介入する相手など他に居るはずがない


(セオリー通りね)

美智恵から見て横島達の行動はセオリー通りであり、まさに王道であった

霊力を帯びた煙幕は敵から姿を隠すと同時に、他人から自分達の姿を隠す事が目的なのだ

アイテムの威力が桁違いな違いはあるが、相手の能力や強さを知る以上は先手必勝で決める事は必ずしも悪い手ではない


「ドクター・カオス、五百メートル先に・不審人物を発見しました」

それぞれが思惑を持って事態を見守る中、マリアのレーダーは山の中を走る不審人物を発見してしまう


「不審人物って地元の人じゃないの?」

「ノー・ミス美神、不審人物は自動小銃を所持して、北々西へ逃走中です」

マリアの報告に令子は山に入った地元の人かと考えるが、マリアはそれを否定する

五百メートル先と遠く木々が生い茂る森だが、その僅かな木々の隙間から男が武装した姿をマリアははっきり捉えていたのだ


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