真の歴史へ・その四

現時点で誰がどこまで知ってるかは解らないが、真実を知って令子に生きててほしいと願うのは親である美智恵と公彦や魂の結晶がほしいアシュタロスくらいしかいないかもしれない

美智恵とて助けはほしいのだろうが、助けを求めれる相手が居ないのだ


「同じ人間や神族ですら味方にはなれないですからね。 メフィストも厄介な物を盗みましたね」

四面楚歌という言葉がこれほどピッタリくる状況はないだろうほど、周りが敵だらけの美智恵と令子に小竜姫は思わず同情してしまう

メフィストは生きる為に仕方なかったとはいえ、あまりに厄介な物をアシュタロスから盗んでしまったのだから


「子は親に似るとは言うけど、美神さんやルシオラを見てるとまさにアシュタロスの娘なんだって感じるな」

令子とルシオラは性格から生き方までまるで似てないが、横島は人生そのものは何故かアシュタロスと似てる気がしてならない

三界を敵に回してもくじけぬ心の強さは、アシュタロスからの魂の遺伝ではないかとすら考えてしまうのだ


「実際問題として魂の結晶の転生または破壊は、問題の先送りでしかないのよね。 しかもアシュ様クラスの魔神を神魔界の介入ナシに倒せるチャンスなんて二度とないだろうけど……」

アシュタロス戦を防ぐだけならば令子を殺せば済むのだが、それでは問題の先送りにしかならない

まあ一般の人間や最高指導者以外の神魔にとってはそれで後は神魔上層部に任せればいいのだろうが、魔神クラスの魔族を神魔の介入なく倒すチャンスはおそらく二度とないのだ

未来の破滅を知る横島達と最高指導者は出来るだけ未来と似た形で、アシュタロスを永遠の眠りにつかせて神魔戦争を防ぐのが最も破滅を防ぐ確率が高いとの結論に至っている

実際僅か数百年でコスモプロセッサーを造るようなアシュタロスをこれ以上放置すれば、次の機会にはアシュタロスを出し抜き勝てる可能性が限りなく低いという問題がある

結局アシュタロスの頭脳に対抗出来る存在が神魔人界に存在しないという致命的な問題がある限り、この時代での決戦を回避する事は出来なかった



「とりあえず目の前の戦いに集中しなくっちゃダメね。 未来だと辻斬りの捜査をしてた時に美神達が犬飼に会って斬られたって事は……」

少しズレた話を戻したタマモだったが、美智恵達の行動が戦闘に発展する可能性が高いと推測している

未来と同じように捜査をオカルトGメンとGS達が捜査を始めれば、必ず人狼と戦う事になるだろうと確信しているようであった


「今のピートさんだと安々と負けはしませんが、唐巣さんや六道さんを守りながらでは無理ですね」

正式に弟子にした訳ではないが、小竜姫は半ば弟子となっているピートでも唐巣達を守りながら人狼を倒すのは無理だと考えている

下手な犠牲を出したくないが故に、わざわざ昨日ピートに警告に行ったのだ


「やっぱ問題は南部グループか……」

「お義父さんとお義母さんのおかげでだいぶ組織の全容は見えて来たけど、細かい調査にはまだ時間がかかるわ。 奴らを完全に潰すのは今は無理よ」

横島達にとって今回の最大の障害は南部グループだった

ルシオラは大樹と百合子の協力の元調査を進めているが、まだ時間がかかりそうなのである

横島達は南部グループを警戒しながら人狼の問題とフェンリル化を防ぐという難しい状況に置かれていた


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