平和な日常~夏~

雪広邸でパーティーが開かれてる頃、近右衛門は今だに仕事をしている最中だった

麻帆良祭の後始末もようやく終わりの目処が着いたが、関東魔法協会ではすでに外交部を中心に次なる問題であるネギ・スプリングフィールドに関わる交渉を地球側各国の魔法協会と開始していたのだ

メガロメセンブリアから提示されたネギ受け入れに関する戦時の指揮命令権の話し合いについて、関東魔法協会は今まで正式な回答を示してなかったのである

それもそのはずで問題は麻帆良だけでは済まされず、地球側各国魔法協会との調整も当然必要だったのだ

各国魔法協会ともにこれがメガロの罠の可能性が高いのは理解してるが、それでもメガロへの従属関係を断ち切る一歩を欲していた

ただこの件の問題が難しいのは、戦時の指揮命令権の撤廃は麻帆良にとって何の利益もないことだろう

それに利益どころか下手に交渉に参加すると逆効果になり、せっかく独立したのに新たな従属関係を迫られる可能性もない訳ではない

正直な話、麻帆良が受け入れることが出来ないのを理解した提案であった



「各国魔法協会の反応はどうじゃ?」

「ある程度予測の範囲内ですが予測以上に静かです。 ジョンソンはともかくとしても、他はあまり乗り気ではないようです」

関東魔法協会は今回の交渉でネギの受け入れを拒否する回答を各国魔法協会に内々に提案していたが、それに対する各国魔法協会の反応は思ってた以上に静かなものであった

アメリカにあるジョンソン魔法協会などメガロに近い魔法協会はいい顔はしなかったが、誰もあんな提案を麻帆良が受けるとは始めから思ってない

赤き翼の生き残りである詠春や高畑が居る日本ならばネギの育成に最適だと思う者も居るが、そもそも近右衛門も含めて地球側の人間はナギに貸しはあっても借りはない

二十年前の大戦やその後の赤き翼の末路を見ると、誰もナギの息子など受け入れたくないのが当然だった

加えて二十年前の戦争の裏側を知る地球側魔法協会はメガロをあまり信用してない

地球側魔法協会上層部は戦争が全て秘密結社《完全なる世界》の責任であり彼等の陰謀だったなどという戯れ事は信じてないし、赤き翼を始め様々なルートで大戦の裏側はおおよそ知っていたのだ

まあ大戦の原因や責任が一番重いのが秘密結社《完全なる世界》なのは変わらないが、メガロや帝国内部にはそれを知りつつ利用していた者やわざと見逃して利用していた者も多い

加えて大戦後には完全なる世界の残党狩りと称して中立都市国家に進駐するなど、メガロにとって完全なる世界は非常に都合がいい存在でもあった

完全なる世界の方は首謀者が姿を消してから組織の力が急激に落ちたため寝返りや裏切りなども多く、完全にメガロに政治的に利用された形になっている

少し話が逸れたが地球側魔法協会は戦時の指揮命令権は無くしたいのは当然あるが、だからと言ってメガロも信用ならないので近右衛門の予想以上に慎重だった

現在交渉参加に意欲的なのはジョンソンなどのように、親メガロ系の魔法協会と事実上メガロが支配する魔法協会だけなのである



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