平和な日常~夏~

「スピーカーがカラオケに似合わんほど音がいいな」

カラオケも始まり会場は徐々に盛り上がり始めるが、やはり雪広家のカラオケは普通じゃなかった

カラオケに使用してるスピーカーが普通のカラオケ用ではないらしく、映画館やコンサート会場を越える音のクオリティなのである


「確かに音が違うわね」

「こんな音のいいスピーカーでカラオケしてるのはここくらいだろうな」

横島の言葉に木乃香や夕映達はあまり違いを感じないらしいが、日頃から不思議なほど耳がいい明日菜は横島と同じく音の違いが分かるらしく驚きの表情を見せていた


「みんなも歌って来たらどうだ? こんな広い場所でカラオケするなんて滅多に出来ないぞ」

「遠慮するです。 こんなに人が多い場所で歌うなんて無理です」

気持ち良さそうにカラオケを歌う桜子や美砂達に鳴滝姉妹やまき絵や裕奈などが次々に続くが、逆に会場の大きさと人の多さからとてもカラオケなど出来ない者も多い

夕映とのどかは真っ先に拒否してしまい、木乃香と明日菜も恥ずかしそうにしており無理そうである

この辺りは性格が出るのだろうが会場には料理人や雪広家のメイドなどを加えて百人近くいるので、こんな多人数の前で歌う勇気がないのだろう


「横島さんこそ歌って……、っていうかまだ食べるの?」

ほとんどの人がすでに食事を終わり成人はお酒をメインに切り替えてる頃、横島は今だに食事がメインだった

横島に勧められたカラオケをそのまま横島に勧めようとした明日菜だったが、肝心の横島は追加の料理を取りに席を離れていく


「ホンマによう食べる人やな~」

「太らない体質なのでしょうね。 着痩せするようですし……」

気持ちがいいほどの食べっぷりの横島に慣れてる木乃香や夕映は慣れた様子で横島を見送るが、食べる量と体型が釣り合わない現状に少し不思議そうだった

まあ横島が見た目と違い体力や力があると図書館探検部の活動で知る木乃香達はまだ違和感ないが、横島をあまり知らない人間からするとロクに物を食べてない貧乏人に見える気がするのが不思議で仕方ないようである

ちなみに横島と同じくまだ食べてるのは、五月と古菲の二人だった

五月はいろいろな料理を食べたいらしく少しずつ何回も食べてるが、古菲は横島同様に不思議なほどよく食べている


「本当におかしな人よね」

料理を取りに行った横島を目で追っていた明日菜は、嬉しそうにしながらも悩んで料理を選ぶ横島に思わず笑ってしまう

見る度に違う表情が見える横島のことを考えると、ついつい笑わずにはいられないようだ

不良に絡まれても何も出来なかったかと思えば、ストーカーを簡単に撃退したりと基本的に横島の行動には端から見ると全く一貫性がない

その上勉強なんか出来ないような態度をしながらも頭がよかったりと、訳が分からない行動や態度が結構多い


「あの姿を見てると子供にしか見えへんのが不思議やな~」

「人並み以上に人生経験はあると思うです。 横島さんの矛盾は過去の影響なのかも知れませんね」

料理を選ぶ姿はどう見ても子供にしか見えないが、人並み以上の人生経験があるのは明らかであり木乃香や夕映も興味深げに横島を見つめていた




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