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平和な日常~夏~

崩し的に始まった打ち上げパーティーの主役は雪広家が用意した料理であった

高級食材の料理も多いが決して食材に負けることなく、食材を生かした料理が普通に並ぶのだから誰もが圧倒されるしかない


(普通は何年もかけて失敗と経験を積んで出す味なんだよな)

そんな中で横島もまた好きな料理を堪能するが、視線はふと調理する料理人に向いていた

元々借り物の技術と経験で料理する横島にとって、本物の一流の料理人からは学ぶべきことが多いと感じる

その気になれば一度食べた料理をそのままコピーするくらい簡単に出来る横島にとって、時間と苦労を重ねて成長する本物の料理人は別格な存在であった

横島自身が自ら料理人を名乗らないのも、実はその辺りに理由がある

まあ基本的にはあまり堅苦しく考えるつもりはないし例え卑怯と分かっていても使える技術は使うのが基本だが、横島は自分に欠けてる積み重ねた重みがないのを自覚していた

それがいいのか悪いのかは判断が難しいが、横島は自分にない重みを求めてしまう

それが横島本人の意思なのか、それとも継承した魂の経験から来る意思なのかは誰にも分からないが……


頭の片隅ではそんなことを考えつつも、横島は表面的にはいつもと同じように食事をしていた

まあ美味しい物を食べると自然と笑顔になるが、それは横島も変わりなく内心にある僅かな葛藤以外は幸せな時間を過ごしていく


「それにしてもいい酒を当たり前のように持って来るな。 値段聞くの怖くなるような酒だわ」

今回のパーティーは食事はセルフサービスだが、飲み物は雪広家の人間が運んでくれていた

横島の元にはもちろん酒を運んでくれるのだが、料理に相応しい酒を選んだのか値段を聞くのが怖いような酒ばかりである


「横島さんお酒強いのよね。 結構飲むけど記憶を無くすなんてないみたいだし……」

「飲みが足りないのでしょうか? 酔っ払ってから言うような本音を聞いてみたい気もするです」

一方同じテーブルで食事をする木乃香達だが、明日菜と夕映は高級な酒にビビる横島が本当に酔っ払らう姿が見たいと話していた

二人は別に横島が嘘をついてるとは考えてないが、酔っ払って本音をぶちまける横島が見てみたいらしい



「ねえ、いいんちょの家にカラオケはないの?」

「いくらいいんちょの家でも……」

「もちろん、ありますわよ」

そのまましばらくは料理を堪能する少女達だったが、お腹が満たされると騒ぎたくなる者が現れ出していた

その中の一人である美砂は冗談半分でカラオケがしたいと言い出すが、円や桜子は流石にそれはないだろうと笑ってしまう

しかしあやかは驚きもせずに、さも当然のようにお手伝いさんにカラオケを用意させる


「うそ……」

「しかも最新型の通信カラオケだし……」

「じゃ、私が一番!」

どこからか運ばれて来たのは、普通にカラオケボックスなどにある業務用の通信カラオケだった

冗談のつもりで笑い話で聞いた美砂と円は驚きのあまり固まってしまうが、その隙を突いて桜子が一番に選曲をしてカラオケを歌い始める



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