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平和な日常~夏~

そのままあやかの許可を得て屋敷を見て歩く少女達だが、その規模に誰もが目を輝かせ歓声を上げる

実際庶民には一生縁がないような豪華絢爛な屋敷には、最早住む世界が違うのだろうと感じるほどだった

まあ誰もが雪広家が金持ちなのは当然知っているし、自宅が観光地になっているのも有名な話だが中に入るとまた印象がまるで違うのだ


「まるで映画に出てくるような景色だな」

早く到着した少女達が見学に行った後も横島達はサロンで周りの景色を見ていたが、芸術が分からぬ者にも芸術だと理解出来る世界がそこには存在した

絵画などの芸術品から家具などのインテリアまで、それは値段に関係なく日常の一部として使用してるのだから真の意味での金持ちだということだろう


「綺麗だな」

そんな芸術が分からぬ者の一人である横島だが、何故か一枚の麻帆良の街が描かれた絵画の前で思わず立ち止まっていた

横島自身は芸術を理解出来ると思えないが、何故か引き込まれる何かを感じてしまう


「それも高価な絵画なのですか?」

「多分違うと思う。 ただなんて言うか愛情みたいなモノが見えるんだ」

横島が注目したことで夕映やのどかも有名な絵画かと注目するが、横島は何故か絵画から感情のようなモノが見えていた

特別能力を使ってるつもりはない横島だが、普通にしていても五感や六感が人より優れてるのは事実である

横島自身、それが優れた感性で感じたのか元々絵が持つ魅力なのか分からなかったが……


(そういや絵なんてまともに見たのはいつ以来だろうな)

芸術は全然に理解出来ないと考えいた横島だったが、現在の魂になってから芸術に関わりもしなかったのだと改めて痛感する

試しに少し見ようとしたら、絵に込められた思いや愛情が簡単に見えてしまうのだ

鋭過ぎる能力は必要ないから抑えるが、それでも麻帆良の街の絵からは明確な愛情が伝わってくる


「それはお祖父さまが若い頃に描かれた絵ですわ。 雪広家では文武両道ですので一通り出来るのですが、お祖父さまは特に絵を描くのが好きなのです」

「そういえばそうだったわね。 小さい頃によく一緒に庭でお絵かきしたもんね」

横島の言葉に一枚の絵画に注目する夕映や木乃香達だったが、そんな横島達に絵画の作者を伝えたのはもちろんあやかだった

横島も含めて夕映やのどかはまさか雪広家当主が描いた絵だとは思いもしなく驚くが、それだけその絵は素晴らしく周りの一流の品々にも決して負けてない

明日菜と木乃香はあやかと昔話に華を咲かせるが、横島や夕映達は趣味までもが一流の雪広家の人間に驚くしか出来なかった


「絵と言えば、昔アスナさんがお祖父さまを描いた絵もありますわよ。 お祖父さま気に入ってるらしくって私の描いた絵などと一緒に保存してますわ」

「あの絵まだ持ってたの!?」

「ええ、お祖父さまのコレクションルームにあるはずですわ」

驚く横島達と対照的に一応庶民のはずの明日菜だが、雪広邸が第二の実家のようでたくさんの思い出があるらしい

幼い頃に学校で敬老の日に祖父母の絵を描くことになった時に描いた絵が、今でも大切に保存されてると聞いた明日菜は恥ずかしそうにしていたが何処か嬉しそうでもあった



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