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平和な日常~夏~

さてそんな日常も更に数日が過ぎ雪広家での打ち上げの約束の日の夕方、横島は雪広邸の門の前に来ていた


「金持ちって、なんでみんなでかい家に住むんだろうな」

そこは日本とは思えぬほど広々とした広大な西洋式庭園に囲まれた邸宅であった

横島はその凄まじい屋敷にかつての六道家を思い出すが、派手さ加減で言えば六道家よりも雪広家が派手かもしれない

基本的に六畳一間あれば生きていける横島には、全く理解出来ない世界である


「中はもっと凄いわよ。 奥にも庭があるし、プールだけでも野外と室内の二つあるしね」

お手伝いさんに案内されるまま敷地内を進む横島は、例によって木乃香達と一緒に来ていた

途中雪広邸に詳しい明日菜に説明されながら進む横島だが、すっかり観光気分である


「久しぶりに来たけど変わってないわね~ 小さい頃は庭でよく遊んだわ」

「懐かしいわ。 アスナなんか、彫刻壊したこともあったんやえ~」

「あの時は流石に参ったわ。 怪我がなかったからよかったって許してくれたけど……」

門から屋敷まで歩きながら昔話に華を咲かせる木乃香と明日菜だが、雪広家にはいろいろ思い出があるらしい

何かの拍子に庭の彫刻を壊して明日菜が怒られたと木乃香は笑っているが、壊したことよりも怪我をするような危険なことをしたと怒られたのは明日菜にとっていい思い出の一つだったりする


「……この庭の彫刻を壊したのか? どれも軽く百万はするやつだぞ」

懐かしそうに思い出話をする二人に横島がポロッと庭にある彫刻のランクを告げると、木乃香と明日菜のみならず夕映やのどかも固まってしまう


「本当なの? 安い物だからって笑ってたのに……」

「確かに庭の規模に比べれば安いだろうな」

明日菜が壊した彫刻がどんなやつかは知らないが、基本的に見える限りの庭にある彫刻なんかは百万から一千万を越える物が普通である

ちなみに横島がおおよその値段を言い当てたのは、もちろん令子の知識だった

彼女は芸術的な価値云々と言うより金銭的な知識が並大抵ではないのだ


「夕映怖いよ」

「迂闊に触れませんね」

雪広邸は普通にある物も高いのだと改めて感じたのどかと夕映はびびってしまうが、明日菜は値段を聞いて固まっている

どうやら新聞配達の給料と比較して考えてるらしい


「もしかして美術館にあるような物なん?」

「流石にそこまでは分からんが、この手の物は特注品だと高くなるからな。 それに年月が過ぎると価値が上がる時もあるし。 まあこの広い庭に置くんだから、それなりに価値はあるだろうよ」

見慣れた雪広家を改めて見回してしまう木乃香は横島が芸術関係も詳しいのかと尋ねるが、正直芸術関係はイマイチだった

ヒャクメの能力で簡単に年代や制作に関する情報は見えるし、それを元に令子的な価値観で値段に換算は出来るが正直芸術の話はサッパリである

残念ながら横島が受け継いだ知識には芸術関係の詳しい知識はないらしい



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