「あれ、マスター彼女出来たの？」

賑やかな食事を済ませた横島と明日菜はそのまま中心街に移動して適当にイベントや出店を見物するが、偶然横島の店の客である女子高生に声をかけられていた


「まあな。　かの」

「違います！　一緒にご飯を食べに来ただけなんです」

明日菜を見た女子高生は店で何度か見たことがあると気付いたらしく横島の彼女かと尋ねるが、横島は何故か肯定しそうになり明日菜は慌てて否定する


「冗談だよ。　そんなムキにならんでも俺が相手なら誤解されないって。　実は今中等部の麻帆良祭の出店を手伝ってるんだ。　よかったら来てくれよ」

ムキになって否定した明日菜を見て横島は面白そうに笑うが、ある意味横島は否定すると分かっていたからこそ言えたのだと明日菜は気付いてない

女子高生達も何度か店に来た常連なため横島の性格を知っており、冗談だとすぐに見抜いて笑っている

慌てる明日菜を尻目に横島はちゃっかり女子高生達に仮設店舗の宣伝をしていた


「やっぱり彼女じゃないんだ～　マスター中等部の子と仲いいもんね」

「今度私達もご飯連れて行って下さいよ」

「麻帆良祭終わったらいいぞ。　麻帆良祭期間はいろいろ忙しくってな」

結局横島は挨拶程度の会話をして女子高生達と別れるが、明日菜は相変わらずな横島に複雑な心境のようだ

横島と誤解されるのが嫌だという訳ではないが、高畑のことを考えると困るのが原因らしい


「そんな心配せんでもご飯くらいで誤解されないって」

「横島さんって、やっぱり女の人に騙されそうなんですよね」

女子高生達が去り軽くため息をつく明日菜に横島は大丈夫だと告げるが、明日菜は誤解の他にも横島があまりに騙されやすそうな為にそれも心配している

ちょっと褒めるとすぐに喜んでご馳走する横島が、明日菜は不安に感じるらしい


「まあ騙すほど相手してくれるなら、まだ幸せだけどな」

「はい？」

ため息をつく明日菜に横島は苦笑いを浮かべて思わず本音を漏らすが、明日菜も流石に今回の発言には呆れを通り越してポカーンとしてしまう


「小さい頃からモテない人生だったからな～　小学生の時なんかイケメンの奴とあからさまに扱いが違ったしさ」

何となく昔を思い出した横島は懐かしそうに昔の話をするが、明日菜はそれよりもやはり女に騙された過去があったのだとの勘違いの確信を強めていた

実は明日菜の勘違いが横島の妙な噂の原因の一つなのだが、横島本人も明日菜もやはり気付いてない


（そういえば夕映ちゃんが、騙されてるの知ってて騙されたかもなんて言ってたけど……）

横島の呟きから明日菜はまた新たな誤解を深めるが、ここまで来ると心配になるのがお人よしの明日菜であった


「横島さん、知らない女の人に着いて行ったり貢いだらダメですよ」

「俺は子供か！」

「最近は子供の方がまだしっかりしてますよ」

横島を心配して悪い女に騙されないようにと注意する明日菜だが、その言葉に横島は相変わらず笑って冗談だと受け取っている


（まさか、放っておくと騙されて居なくなるタイプじゃ……）

そんな横島の姿に明日菜は更に不安を感じ、横島が騙されればまた旅にでも出るのではと新しい誤解を生み出していた