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麻帆良祭

一方刀子達と横島の様子に驚きを隠せないのは、自分の担当時間が終わり帰ろうとしていた刹那だった

割と仲がいいと言うか刀子が笑顔を見せて他人と話す姿は非常に珍しい

常に冷静沈着であり、教師としても剣士としても柔らかい表情の刀子は見たことがなかったのだ

まあ刀子自身は今も多くの生徒が周りに居ることから自重しており、いつも横島の店に居る時よりは表情が堅いが、それでも刀子をよく知る刹那はその変化に驚きを隠せないようである



(刀子さん……)

この時刹那の胸の中には、言葉に出来ないモヤモヤとした感情が込み上げていた

流石に最近は当初ほど横島を警戒してる訳ではないが、時折見え隠れする非凡な行動を見てる故に信頼出来るとまでは言えない

木乃香に害を与える存在には見えないが得体の知れない横島が、いつの間にか木乃香や2-Aのクラスに深入りした現状を見過ごすには少し怖い相手でもある

何か目的があって近付いたのではとの疑問が消えなかったのだ

その気になればいつでも取り押さえることが出来る相手に見える為に危機感は薄いが、刀子のように笑顔を見せる相手にはどうしても思えなかった


「まだ気にしてたのか?」

「私はそういう性分なんだ」

横島と刀子を静かに見ていた刹那に声をかけたのは龍宮真名である

相変わらず横島を警戒する刹那に少し呆れた表情なのは、横島が刹那の警戒に対し全く気付いてないように見えるからだろう

本当に気付いてないのか気付いてないフリをしてるのかは真名にも分からないが、どちらにしろ現状では刹那の警戒は成果がまるでないのだ


「気をつけないとそういう行動は敵を作るぞ。 大切なヒトを守りたいなら敵を減らし味方を増やすべきだ。 少なくとも敵意のない相手をあからさまに警戒していい印象は与えない」

あまり他人の行動をとやかく言うのは好きじゃない真名だが、刹那の行動はあまりに危険に思えた

横島が気付いてないならいいが、気付いていたら印象を悪くして敵を作る可能性もゼロではない

友人のあまりに不器用な生き方に流石に一言言わずには居られなかったようだ


「敵を作る……?」

「私が言うのも何なんだが、闘いは防げなかった時点で負けとも言える。 少なくともあの人が敵か味方か分からないならば、こちらから味方にするくらいの気持ちの方がいいと思うが?」

刹那とて横島を敵だと判断してる訳ではないが、その行動は近右衛門と正反対であった

少なくとも実際の戦場を知る真名からすれば、刹那はあまりに幼く視野が狭い


「しかし……」

「戦場では敵味方がコロコロ変わるなどよくあることだ。 あの人を相手にするならば葛葉先生のように懐に入り込む方がよっぽどいいと思うがな」

刹那はその生い立ち故に、真名の言葉をすぐに受け止めるのは難しいようだった

しかしそんな真名も刀子の事を少し誤解しており、特に深い考えがあって横島に関わってる訳ではない事には気付いてない

正直言うと刀子も真名ほど戦場は経験してないし、敵でも味方でもない横島相手に裏の駆け引きなどしたくない心理は理解してなかったようである



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