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麻帆良祭

「ねえ、あの人本当に女の人苦手なの?」

「苦手って訳じゃないけど、あからさまに迫られると逃げちゃうみたいよ」

「優しい分タチ悪いね」

忙しい中でひと昔前のラブコメのようなシーンを再現している横島に裕奈は本当に女が苦手なのか疑問を感じたようだが、朝倉いわく迫られると逃げるのは比較的有名らしい

女子高生なんかに誘われてはぐらかした件が、比較的広まってるようだ

まあ本気の告白と言うよりは遊びに連れてって欲しいと誘われた件なのだが、横島は冗談として対応してかわした事が何度かあったのである

様々な噂話なんかと混ざって好き勝手な話が広まってるらしい


(俺だって出来るなら気楽に女の子と遊びたいよ)

内緒話のように話していた裕奈達だが、やはり横島の聴覚は普通ではないので聞こえしまう

別に女が苦手な訳でも逃げてる訳でもないのだが、気軽に女に手を出せない事情があるだけに仕方ないとしか言いようがない


「肉まん追加まだ?」

微妙な雰囲気の厨房だったがカウンターから料理の催促が来ると、みんな慌てて作業に戻っていく

本来ならば横島で遊びたい子達も居るのだろうが、流石にそこまで自由にする余裕はなかった


さてそんなこの日の営業の様子だが、人数が減って仕事は忙しくなった割にはスムーズに進んでいる

やはりマニュアルが役に立ってるのだろう

流石にゆっくり楽しみながら仕事をする余裕はないが、こづかい稼ぎのアルバイトだと割り切ってみんな頑張っていた


「それにしても客が多いな。 予測を越えそうな気が……」

そのまま程よい緊張感の中で働く横島達だったが、客の入り具合が横島の予測を越え始めている


「ああ、それなら多分今日の麻帆良スポーツの麻帆良祭カウントダウン号外にここが乗ったからだと思うわよ」

客の予測がズレた事に横島は若干不思議そうに考えてるが、その理由を告げたのはまたしても朝倉だった

実はこの時期報道部は忙しく、麻帆良祭関連の記事が掲載された号外をいくつも発行していたのだ

アトラクションから中小イベントまで幅広く麻帆良祭の関連の情報を伝えてる為、麻帆良の住人の貴重な直前情報になっていたのである

横島達の店舗に関しては雪広グループや超包子がかなり事前に宣伝していた為に、横島としては今更新規に報道するとは考えてなかったらしい

実際今日の号外で知った者が何人居たかは知らないが、迷っていた者達を後押しする結果にはなったのだろう


「多めに仕込みして正解か。 しかし中華まんが間に合わない可能性も……」

仕込みに関しては予測よりも多めに仕込みしたので今のところ問題ないが、中華まんの作るスピードが問題であった

横島は中華まんを作るサポート担当に指示の変更をして乗り切ろうと行動する


ちなみに雪広グループのパビリオンの方も麻帆良スポーツの影響で客が急増しており、担当者が商品の確保に走り回っていた

当初計画していた麻帆良祭期間中に販売する商品が、麻帆良祭前に無くなる可能性が出始めていたのだ

元々仮設店舗へ人が流れる影響で地味に売り上げが伸びており、在庫調整などはしていたが日ごとに変わる為に毎日調整するハメになっていた

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