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麻帆良祭

「お待たせ」

相変わらずマイペースな横島が用意したのは純和風の朝食だった

古い洋風建築の店内で純和風の朝食を食べる姿は奇妙なモノがある

ましてエヴァの隣には茶々丸が横島の隣にはさよが居るのだから尚更奇妙だった

焼いたアジの香ばしい香りに食欲をそそられたエヴァは、特に表情を変える事なく出された朝食を食べ始める

ふんわりダシ巻き卵にほうれん草のお浸しなど、どれもよくあるメニューだが短時間で作ったとは思えぬ昔ながらの家庭の味だった

そんな朝食を食べながら横島は茶々丸にさよの事を説明するが、流石に幽霊が居ると言われても見えないため反応に困ってしまう


「幽霊ですか」

さよは何度も手を振ったりするが、やはり見えるはずもなく茶々丸としては信じるしかない状況であった

幽霊が存在する事は知識としてデータにはあるが、流石に見えない物は信じるしか方法がない


「見えてるなら声かけてくれたらよかったのに……」

「あの教室で私しか見えないのに声をかけられる訳がないだろう。 可哀相な子扱いされるのがオチだ」

「そうですか?」

一方エヴァはさよに懐かれていろいろ話をしていたが、意外にも普段に答えて話をしていた

さよの天然っぷりにたまに顔が引き攣る時はあるが、それでも普段のエヴァと比べると本当に優しい

孤独を知る故に孤独に苦しんでいたさよには、何かしらの共感があるのかもしれない


「茶々丸ちゃんも見えるようになったら、さよちゃんと友達になれるのにな」

「私はガイノイドなので無理かと……」

「そんなことはないよ。 いずれ見えるようになるさ」

さよとエヴァの会話を聞きつつ横島は嬉しそうに笑顔を見せてるが、何故か茶々丸にもいずれさよが見えると言い切ってしまう

茶々丸は横島の言葉の意味が分からずに首を傾げるが、それは彼女が自らをガイノイドと自覚してるうちは理解出来ないことである


「そういえば、何か用でもあったのか?」

「用などない。 早く目が醒めたから茶々丸に着いて来ただけだ」

そんな朝食も終わりお茶を片手に一息つく横島はようやくエヴァが来た理由を尋ねるが、特に理由などないようだった

まあ実際は呪いの研究にボトル型魔法球の別荘にしばらく居た為に、久しぶりに麻帆良に戻って来たエヴァがお茶を飲みに来ただけだったのだ

横島が日中は麻帆良祭の店舗で忙しいのを知っていたので、茶々丸が毎朝来ている時間に合わせて来たのが真実である


「貴様はいつ見ても楽しそうだな……」

久しぶりに来たら幽霊と友達になっていて猫に遊ばれていた横島が、エヴァは少し羨ましいようだった

それがただ能天気なだけならば馬鹿な人間だと切って捨てるのかもしれないが、横島にはそれ以上の何かがあることは薄々感づいている

いつの間にか自分の正体を知られていた事から考えても、本質は馬鹿ではないのだと考えているようだった


「いや~、最近よくそう言われるんだよな」

自身の微妙な表情を気付かぬように頭をかきながら笑っている横島が、エヴァはやはり少し羨ましいと感じたのは言うまでもない


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