麻帆良祭

店の営業も三日目になると徐々に仕事もなれていく

この日は前日の反省から仕込みには八人ほど選ばれており、相変わらず賑やかに仕込みが行われている

まあ仕込みには若干多い人数だが、少女達がおしゃべりをしながら楽しく仕込みをするにはちょうどいいだろう


「今日は何を作ってるの?」

そんな仕込みの最中に若干の余裕が出来た横島は、ドーナツ用に大量に頼んだおからを使ってまた何かを勝手に作り始めていた

流石に昨日もあった事だからそれほど驚きはないのだが、何を作るのかみんな興味津々である


「今日は余裕があるからおからでクッキーでも作ろうかと思ってな」

基本的におからは余裕と言うか余るほど届いていた

元々値段があってないような物だし、ほっとくと捨てられる物だから多めに頼んでいたのだ

今日はそれを利用してクッキーを限定販売するらしい


「昨日は売れ行きよかったんだし、ケーキの方がいいんじゃない?」

「じゃケーキにするか」

「えっ……?」

クッキーを作ると聞いて、すかさずケーキがいいと言い出したのは美砂である

横島がそんな美砂の意見にあっさりとケーキに変更すると言うと、言い出した美砂の方が驚きポカーンとしてしまう

何かクッキーにした理由でもあるのかと言った言葉を、そのまま受け取られて逆に美砂が困っている


「えっと、そんな簡単に変えてもいいの?」

「いいんだよ。 前に一応おからのパウンドケーキも試作したしな」

あっさりとケーキに変更したことを美砂は少し不安そうに、本当にいいのかと尋ねるが横島は相変わらず軽かった

実はおからは素材の特性で意外と調理が難しいのだが、美砂はそこまで知るはずもない


「いつもこうなのですか?」

「そうやな。 横島さん気分次第な人やから。 味は大丈夫や」

横島と美砂のやり取りを見ていたあやかは、言葉に出来ない違和感を感じていた

普通の料理人が持っているプライドのようなモノが、横島には全く見えないのだ

思わず木乃香にいつもこうなのかと尋ねたあやかだったが、別に味を心配していた訳ではなくプライドが見えないことが不思議だっただけである


「仕込んだ鶏肉はそろそろいいんじゃないか。 から揚げ揚げてみてみんなで味見するか」

そんな感じで勝手にケーキを作ってる横島だったが、無論仕込みの方も気を配っており今日から販売するから揚げを試食用に揚げるように指示を出す

販売前にみんなが味を知らないとダメだろうと考ているらしい


「美味しいですね」

「元々肉そのものが美味しいんだよ。 流石にいい地鶏なんかには負けるが、十分美味しい肉だからな。 味付けはニンニク使わん方がいいかと思って和風にしたんだが……」

味付けに関しては今朝来てから超達と相談して決めたのだが、ニンニクを避けた方がいいからと考え和風になったようだ

スパイスを効かせたから揚げも考えたのだが、他の料理や軽食の兼ね合いから肉の美味しさを引き立てる程度の和風の味付けに決めたようである


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