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真の歴史へ・その二

一方メドーサを案内しているルシオラは、一緒に来た二人に驚いていた


(何故あの親子がメドーサと一緒に?)

メドーサが来る事自体はある程度予想済みなのだが、何故美衣とケイが一緒なのかわからない

それと言うのも、ルシオラは以前から美衣達の住む山の開発などに関して監視していたのである

すでに未来で問題になったゴルフ場開発は、百合子の協力の元で計画地変更に追い込んでいた

そのため現在は新しい開発計画が起きないか、注意深く監視している段階だった


美衣とケイの二人に関しては横島自身の思い入れが深いこともあり、静かに暮らせる環境を守ってやる事になっていたはずなのだ


(あの人が美衣さんなのね)

緊張感漂う美衣と怯えた様子のケイを見て、ルシオラは表情には表さないが感慨深いものを感じている

横島の過去において人生を左右する重要なターニングポイントはいくつかあるが、美衣とケイとの出会いも間違いなくその一つだと確信していた


(二人との出会いが横島の人外に対する価値観を作ったと言っても、過言じゃないのよね。 横島が二人と出会ってなければ、私と横島は惹かれ合う事すら無かったかもしれない)

歴史に『もし』は無いが、二人が横島に与えた影響は計り知れないとルシオラは感じている

この二人との出会いが無ければどんな未来になったのかと思うと、ゾッとしてしまう



さてメドーサの方は緊張感のカケラも無い横島に言葉も出ないようだったが、隣でゲームに熱中する老人を見て固まってしまう


(あいつどっかで……)

メドーサは見知らぬ老人に己の魂が騒ぐのを感じ、その人物をじっと見つめている


「よう! 遊びに来たのか?」

ゲームを雪之丞に譲った横島は友人のようにメドーサに対応するが、一緒に居る美衣とケイには驚いていた


『ルシオラ、どういう事だ?』

『それがサッパリ…… 例の開発以降は問題は無かったんだけど』

念話でルシオラに尋ねる横島だが、無論ルシオラもわからない

結局二人はメドーサに話を聞くことにしていた


「アタシが遊びに来る訳無いだろ。 ちょっと予定外の揉め事に巻き込まれてね」

ゲームをする老人を警戒するメドーサだが、表面上は隠して話を進めていく


そんな中、横島はメドーサの話を聞きながら美衣とケイを優しく見つめている


(まさか会えるとはな……)

この時代に来て以来ずっと気になっていた二人に会えた事で、横島は思わず昔を思い出していた

何も知らなかった自分が一瞬とはいえ初めて本気で令子と敵対したあの事件は、横島にとって特別だった

二人の静かな暮らしを守れた事は、横島の過去で数少ない誇りとも言える


(会うつもりは無かったんだがな)

人との交流を望まない二人を、静かに暮らさせてやりたい

横島はそんな一方的な思いから少し強引とも言える手法を使って、間接的に二人の暮らしを守って来た

横島にとっては見ず知らずの人間の開発より、二人の静かな暮らしの方が大切なのだ


そんな横島に恐る恐る今日の事を説明していく美衣だったが、初対面にも関わらず優しい表情の横島には違和感を抱く

美衣が妖怪と知ってそんな表情を向けられた事は、過去には全く無いのだから


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