麻帆良祭

「おはよう……、ってなんでみんな早いんだ?」

朝の日課を終えた横島は一休みして仮設店舗に向かうが仮設店舗の厨房には、すでに超・五月・茶々丸・あやか・千鶴・夏美・木乃香・明日菜・夕映・のどかの合計十人の者が仕込みを始めていた

横島が仮設店舗に到着したのは朝の六時過ぎであり、早く着きすぎた訳ではないだろう

何故彼女達がこんなに早く仕込みを始めてるのか横島は不思議で仕方ない


「うちらは四人で仕込みの手伝いに来たんよ。 ハルナも誘ったんやけど徹夜で無理や言うてたわ」

「毎日横島さんと超さん達だけに仕込みをさせる訳にはいかないので、私達も手伝いに来たのですが……」

木乃香やあやかは首を傾げる横島に説明するが、どうやら自発的な手伝いが被ってしまったようだ

横島も超達も昨日は仕込みには触れなかったのだがやはりみんな気付いていたらしく、あやか達と木乃香達はそれぞれ別々に来たようだ

実際に彼女達が顔を合わせたのは寮から仮設店舗に向かうための駅であり、双方共に自発的な手伝いが被るとは思いもしなかったようである


「おはよ~、手伝いに来たよ! ってあれ!?」

そして横島が彼女達の話を聞いてる間に、まき絵・亜子・裕奈・あきらの運動部四人組が手伝いに現れる

彼女達もまた厨房にいる人数に驚きの声をあげ、あやかは思わず苦笑いを浮かべてしまう


「……どうやら明日からは仕込みのローテーションも組んだ方がいいようですわね」

その後も美砂達や楓と鳴滝姉妹や古菲に葉加瀬などが次々に仕込みの手伝いにやって来る

何人か来てない者も居るが、自発的な手伝いのはずがクラスの大半が集まったことに集まった本人達も驚きだった

あやかは明日からは仕込みの手伝いを、志願制でローテーションにしようと考えていく


「本当に仲がいいクラスだな」

「今回は一本取られたネ」

一方黙って仕込みをしていた横島と超だが、みんなの体調などを考慮しつつも同時にみんなを出し抜くことも楽しんでもいた

相手を驚かせたりしたいとの思いから横島と超も互いを出し抜こうといろいろ細かな行動をしていただけに、今回は2-Aのみんなに一本取られた形である


「横島さんが女性に甘いのは皆さん知ってますしね。 放っておけば一人で頑張りそうなので皆さん積極的に集まったのでしょう」

「なんか褒められた気がしないな」

「ええ、一応苦言も込めてるですから。 必要な作業はきちんとみんなに話して作業を分担するべきだと思うです。 正直少し甘やかし過ぎはどうかと思います」

そんな中みんなが集まった原因は横島だと夕映が語る

微妙に言葉に刺があるのに横島が苦笑いを浮かべると、夕映は甘やかし過ぎだと横島にはっきり告げてしまう


「大人ですしある程度は優しさなのでしょうが、せめて仕込みはみんなでやるべきでしょう」

「……そうかもしれんな。 わざわざありがとうな」

みんなが騒ぎ楽しそうにしてる中で夕映はあえて横島にダメ出ししていた

横島の優しさや気持ちを理解してるからこそ、夕映は甘やかし過ぎになりそうな横島を注意している

それが夕映の優しさであり気遣いなのは横島もよく理解していた


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