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麻帆良祭

「うむ、美味い」

微妙な緊張感が漂う中で清十郎は食べ始めるが、流石に食べる姿勢は綺麗であり軽そうな見た目とはギャップがある

服装はちょっと派手な普通のおじいちゃんなのだが、食べ方はやはり育ちの良さが現れているようだ


「今日はお仕事ですか?」

「いや、遊びに来ただけじゃよ。 最近はアスナちゃんも家に遊びに来てくれんしのう」

どうやら味は問題ないらしく笑顔を見せながら食べる清十郎に横島はホッとした表情を見せる中、明日菜と清十郎は久しぶりの会話を楽しんでいた

清十郎の方は昔とあまり変わらないようだったが、明日菜は流石に大人になるに従って多少なりとも清十郎との距離を気にしているようである

まあ最低限の常識や礼儀はもちろん明日菜も持っているし、それが逆に高畑や近右衛門や清十郎などの親しい者に昔のように無条件で甘えれなくなったのかもしれない


「昔はよく木乃香と三人で遊んでましたからね」

「あの頃は楽しかったのう。 また散歩に行かんか?」

「ちょっと散歩に行くからって、北海道とか沖縄とか全国に行くのがよくありましたからね。 私あの頃はあれが普通だって勘違いしてましたよ」

料理を食べながら昔話を語る清十郎に明日菜も楽しそうだったが、内容がかなり一般人離れしていた

幼い頃に明日菜や木乃香は、清十郎に散歩に行こうと誘われて飛行機で北海道や沖縄に行ってたりしたらしい


「うちのクラス凄い人多いけど、明日菜も凄いのね」

「金持ちってスケールが違うからな~」

明日菜と清十郎の昔話を聞いていた美砂と横島は、そのスケールの違う内容にポカーンとしている

二人にとっては懐かしい思い出話なのだが、第三者にとってはとんでも話の連続だった


「あっ、雪広のおじいちゃんや」

「おお、木乃香ちゃんも大きくなったのう。 わしが年を取るはずじゃ」

二人の話が盛り上がって来た頃、厨房に横島が戻って来ないことから木乃香達など残ってるメンバーがやって来るが、清十郎に気付いた木乃香が声をかけていた


(そういやあ雪広グループは近衛家と深い繋がりがあるって情報があったな。 もしかして明日菜ちゃんの過去を知ってるのか?)

明日菜と清十郎の会話に入っていく木乃香は、明日菜と同様に昔から知り合いらしい

横島はそこでふと以前土偶羅から上がってきた情報を思い出していた

横島の世界にはなかった雪広グループについて、以前に簡単な調査報告書が上がっていたのだ

まあ調査報告書と言っても横島が清十郎の顔すら知らないことからも分かるように、たいした報告書ではない

ただ麻帆良学園創立当時から雪広グループは麻帆良学園と繋がりがあり、特に近衛家との親交が深かったとの情報である

雪広グループは明治以来麻帆良学園の発展と共に躍進した企業であり、関東魔法協会を側面的に支えて来た企業だとの情報があったのだ


(ただ者じゃないのは確かだな。 まあ魔法は使えんみたいだが……)

近右衛門と違い魔法は使えないようだったが、それでも横島はただ者ではないと感じていた

見た目はちょっとお茶目な祖父のような清十郎だったが、底知れぬ強さを感じずにはいられない

その強さは直接戦うような武力や戦闘力ではないが、故に横島は清十郎がただ者ではないと確信している



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