二年目の春・10

少女達の横島の過去に対する受け取り方は様々だった。

単純に英雄視したり悲劇と談じる事の出来ない複雑な過去。

それが大多数の認識であるが、前向きに受け止める者も居れば過去が気になる者もいる。

とはいえ若い少女達なだけに大人達よりは前向きに受け止めているのが現状だろう。

尤もタマモだけはよく分かってない。

朝方の話も何となくの内容と周りの反応から、本能的に理解したに過ぎない。

何をしていいか分からずに、とりあえず横島を助けなきゃと思ったようである。


「ザジさんも魔族だったのよね? なんか驚きよね。」

「なんで麻帆良に来たんだろうね? 人間社会の勉強のためかな?」

午後のおやつの時間の頃に少女達は起きてきて、穂乃香の用意した食事を軽くとりつつのんびりしていたが。

横島の過去に流されたザジの話をふと思い出していた。


「さあ、俺も知らんぞ。 ってか昨日初めてアイツの娘だと知ったんだしな。」

一昔前のアニメのように人間社会の勉強にでも来たのかと考える少女も居るが、なんとなく横島ならば知ってるのではと視線が集まるも横島は知らないと首を傾げる。

本音を言えば思い当たらない事がない訳ではない。

明日菜の監視か何かかと思うが、現状として何かしている訳でもなく具体的な確証もない。


「麻帆良祭も終わっちゃったね。」

「もっと長くやればいいのに。 ねえ、タマちゃん。」

「うん……」

そして桜子やまき絵などは麻帆良祭が終わった喪失感から、少し大人しかった。

タマモもどうやら同じようで、あんなに楽しいお祭りならば毎日やればいいのにと思うのだろう。


「でも、もうすぐ夏休みや。 タマちゃん今年もみんなと海に行くんや!」

「そうね。 旅行も行くんでしょ?」

どうも昨日の話から元気がないタマモを少女達は心配していて、あれこれと声をかけて元気付けていく。

流石にタマモに聞かせる話ではなかったと誰もが思うが、仲間はずれがタマモのタブーであり、なんとなくタマモにも聞かせてしまったのが現状だろう。


「うん。 行く。」

肝心のタマモは横島に甘えたり少女達に甘えたりと、甘えん坊状態だった。

悲しい感情がまだ消えずにまだ少し怖いのだろう。


「タマモ。 散歩ニ行コウゼ。」

「うん!」

そんなタマモを変える切っ掛けを与えたのは、意外なことにチャチャゼロだった。

何時もはタマモから誘う散歩を初めてチャチャゼロから誘われた事に嬉しくなり、タマモとチャチャゼロはハニワ兵達と一緒に元気よく散歩に出発する。


「なかなかいいとこあるじゃん。」

少女達にとってチャチャゼロは今一つよく分からないところがあるが、一緒に元気に散歩に行く姿を見てチャチャゼロを見直していた。

いいコンビなんだなと微笑ましげに見送った。



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