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二年目の春・10

横島が起きたのはお昼過ぎの二時頃だった。

普段より熟睡していたのだろう。

ベッドから起き出してリビングに行くとハニワ兵達とチャチャゼロがゲーム大会をしている。


「あら、早いわね。 何か食べる?」

「作ってくれたんっすか? 頂きます」

キッチンでは穂乃香がすでに起きていて食事の支度をしていて、横島は促されるまま椅子に座るとご飯と味噌汁と簡単なおかずの食事を食べ始めた。

特に会話らしい会話もなく、ハニワ兵とチャチャゼロのゲームをする音をBGMにのんびりと食事をする横島を穂乃香は静かに見ていた。


「ねえ。 高畑君にそろそろ話すべきだと思うんだけど……」

食後にはお茶を横島に入れてやった穂乃香は、横島の話を聞いた時から考えていたことを口にする。

横島が過去を少女達に教える決断をしたのは、自分の過去を第三者から少女達が聞くのを避ける為であり、最早過去は秘密にしておけないと判断したからでもある。

ザジが何処まで知ってるかはともかく、一旦広まった話は最早コントロール出来ないのは横島が一番理解していた。

横島の過去と少女達を主にアスナを利用する第三者が現れるのではとの、ほんの僅かな危惧からであった。


「いいと思いますよ。 高畑先生はもう一人じゃない。」

「実はね。 その件で頼みがあるわ。 助けて欲しい人が居るの。」

そんな横島の過去を自分なりに受け止めた娘達を見ていた穂乃香は、高畑に隠している秘密を明かすべきなのではと考えたらしい。


「サウザンド・マスターなら時期を見計らって……」

「いいえ。 ナギじゃないの。 ガトウよ。」

「……奴は生きているのか?」

穂乃香は高畑に秘密を明かすに際して重体のまま永久石化されたガトウを助けて欲しいと語るが、その言葉に驚きを隠せなかったのは寝起きのアナスタシアだった。

ちょうどリビングに降りて来た時に聞こえたらしい。


「十年前高畑君は私達のところにも助けを呼ぶ連絡をしてきたわ。 間に合わないのは分かっていてもウチの人は行ったわ。 そこで永久石化されたガトウを保護したの。」

どうも横島は知っていたようで驚きは少なく、逆に驚くアナスタシアに穂乃香はガトウが生きている事情を説明する。


「そうか。 奴は生きていたか。」

「あれを生きていると言えるのか。 ずいぶん悩んだわ。 私達では助けることが出来ずに見てるだけしか出来ない。 ウチの人はそれをどれだけ嘆いていたことか。」

横島ならばガトウを助けられる。

しかし横島が居なければガトウは永久に石化という牢獄に囚われていたのかもしれない。

そう考えると穂乃香やアナスタシアの心中は複雑だった。


「生きる人を助けるのはそう難しくありませんよ。」

「今の高畑君なら大丈夫だと思うの。」

ナギやガトウの現状は高畑にでさえ秘密にしていた。

一つは生きてる事を隠すためであるが、高畑自身のためにも背負わせたくないという想いが詠春にはあった。

高畑は変わった。

少なくとも落ち着いて自分自身と向き合えるようになったのは大きな成長であり、頼もしくさえ感じる。

時なのだろうと穂乃香は思った。

無論明日菜の過去は本人を含め、少女達には明かす予定はないが。

横島の過去と違い流石にそれだけは明かせないと横島を含めて周りは考えている。

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