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二年目の春・9

麻帆良に戻った翌日は麻帆良祭前日になる。

タマモは少女達と朝から仮設店舗で働いていたが、1日休んだおかげで元気いっぱいだった。

笑顔でお客さんを迎えるのがタマモの仕事であり、タマモが居るとお客さんも喜ぶので、それだけで長い行列でも不満が出ることはなかった。


「へぇ。 こっちも混雑してるな。」

一方横島は朝の仕込みを終えると、夕映とのどかと共に仮設店舗を離れていた。

麻帆良祭を明日に控え、麻帆良カレーの屋台と納涼会のイベントの視察をする予定になっている。

麻帆良カレーの屋台はメインステージがある世界樹前広場の近くにあり、麻帆良市内の麻帆良カレー公式店の味が一挙に楽しめる屋台だった。

横島達の店に負けず劣らず混雑してるようで行列が出来ていて、こちらは屋台で買ったカレーを屋外に設置したテーブルで食べるようだが、席は満席になっている。


「お久しぶりです!」

「いや~、元気そうっすね。」

「皆さんのおかげです!」

屋台を仕切る麻帆良カレー実行委員会の人に挨拶をして、状況を聞くが混雑して人員を増員したらしい。

ちなみに横島の麻帆良カフェは、元祖麻帆良カレーとして一番人気らしく横島は驚きつつ満更でもない様子だ。

他には昨年横島が指導した宮脇食堂の宮脇伸二と母親も、店を休んでこちらを手伝ってるらしく、宮脇食堂版麻帆良カレーも中々の人気だという。

横島自身は宮脇親子に会うのは、春に母親が退院した際に挨拶に来て以来だが、夕映とのどかは時々顔を出してるらしく、今回の参加も知っていたようである。


「懐かしいな。 ついこの前のような気がする。」

昨年の麻帆良祭も宮脇伸二の料理修行も、気が付けばずいぶん月日が過ぎたなと横島は改めて思う。

年を重ねてから一年が早く感じるようになった横島は、変わりゆく月日に置いていかれないように気を付けないとなと、苦笑いを浮かべていた。


「いらっしゃいだぽー!」

「よう。 どうだ?」

「まあまあだぽー」

麻帆良カレーの屋台を少し手伝おうかとも思った横島であるが、居なくてもいい人物が突然来てもやる仕事なんてないので、関係者に挨拶をして麻帆良カレーの屋台の視察を終えていた。

次は納涼会関係の場所に行くことになるが、途中で等身大のハニワ兵の着ぐるみを着たハニワ兵の屋台があり立ち寄る。


「美味しいですね!」

「場所があまり目立ちませんね。」

ハニワ兵の屋台はハニワ焼きという、ハニワ兵の形をした人形焼きだ。

フワッとした生地に甘さ控え目の餡やクリームが入っていて、お世辞抜きに美味しいが、あいにくと屋台の場所があまり目立たない場所にあった。

一般参加の屋台は通常半年前に申請して抽選で場所が決まるのだが、ハニワ兵達はギリギリになって参加することになったので、屋台の場所は良くないところがほとほどだった。


「ところでなんで踊ってるんだ?」

「お客さんを呼び込むダンスだぽー。」

なお、ハニワ兵達は人通りが少なかったり、目立たない場所ながら工夫を凝らして営業していて、一部では変な外人の屋体だとか、ハニワの着ぐるみの屋体として知られつつある。

横島達の目の前のハニワ兵も、奇妙な体操のようなダンスを軽快に踊りアピールしているが、話題性はともかく集客力に繋がってるかは未知数だった。

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