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二年目の春・9

夕方というには少し早い頃になると、一行は別荘に戻っていた。

タマモは麻帆良に戻った時の為にと、戻るなりお昼寝をしていて、他の少女達はそれぞれ自由な時間を過ごしていく。


「ヤッホー!」

「冷たくて気持ちいい!」

誰かが付けた風鈴の音色が静かに響く中、まだまだ元気が有り余る一部の少女達は庭のプールで遊んでいて、横島はそんな少女達を眺めつつビールを飲みのんびりしている。


「まるでプールに居るスケベ親父だな。」

「誰がスケベ親父だ。 誰が。」

ちょっと若いが水着姿で遊ぶ少女達を眺める横島も、昔と違いそこまで露骨にスケベそうな表情はしてない。

しかしまあ見る人が見れば分かるようで、アナスタシアは少し呆れたような視線を向けていた。

尤も横島としてはそこまで露骨に見てはないし、半分は元気な少女達を温かく見守ってるだけである。

とはいえ完全に子供として見れる年頃でもなく、また好意を向けてくれる少女達なだけに多少なりとも意識はする。

ここで飛び掛かったり出来なくなったのは、横島も曲がりなりに大人になった証であろう。


「そう言えば、ゲーデル議員が消えたって聞いたけど大丈夫なの?」

「まあ、今のところは。情報操作で捕まるように援護はしてるんですけどね。相手は腐っても赤き翼のメンバーですから」

一緒に酒を飲んでいるのはアナスタシアとチャチャゼロと刀子であるが、刀子はふと魔法世界の状況について口を開く。

クルト・ゲーデルの失踪はメガロメセンブリア当局や悠久の風はもちろんながら、地球側の魔法協会も注目して警戒している。

ネギの去就に首を突っ込んで幼い子供の将来を潰した件は、親赤き翼の人々を落胆させるには十分であり、今度は何をする気だと眉を潜めるのは当然だった。

現状で土偶羅は目撃情報として、マホネットの掲示板などにクルトの行方の情報を流しつつ最重要事項として監視している。

魔法の公開などの蛮行を行う気配を見せたら、それがマホネットやインターネットの世界に流れる前に潰す事だけは決めているのだ。

ただ可能ならばメガロメセンブリアの当局にでも、さっさと捕まえて欲しいのが本音だ。


「麻帆良に来るのではないのか?」

「可能性は高いが、向こうの当局も馬鹿じゃないからな。 ゲートは監視している。 中立や帝国のゲートも含めてな。」

クルトの狙いは何なのか未だはっきりしてないが、魔法世界から地球に通じるゲートは全てにおいて監視されている。

メガロメセンブリアと対立関係にある帝国ですら、クルト・ゲーデルの指名手配と地球側への逃亡の可能性を外交ルートから伝えて、現れたら身柄の引き渡しを求めていた。

まあ身柄の引き渡しは可能か分からぬが、少なくともクルトを地球側には絶対に行かせないという覚悟は示しているらしい。


「一つ穴があるんだよなぁ。」

ただし地球側と魔法世界のゲートには一つだけ穴がある。

超鈴音の歴史や横島の居ない歴史にて、ネギ・スプリングフィールドが少女達と魔法世界に行った際に使おうとした、麻帆良に通じるゲートがあるにはある。

当然ながらそこは立ち入り禁止区域なので、入る事すら叶わぬはずだが、何かしらの方法で入り込むのは不可能ではない。

出来れば関わりたくないだけに、横島は魔法世界の人達に早く捕まえてくれよと、ため息をこぼしたくなる心境だった。

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