二年目の春・9

異空間アジト版ヴェルサイユ宮殿は史実と同じ場所にある。

ハニワ兵達が技術の粋を集めて再現した物で、文化遺産の復元に熱心なハニワ兵達が造り上げた。

ちなみに復元は百パーセントではなく、非常口や避難用の通路に当初のベルサイユ宮殿には無かったと言われるトイレも設置してる。

まあハニワ兵はトイレを使わないが、そこはいつ人が来てもいいようにという配慮や、無いのはおかしいだろうという拘りから設置されたらしい。

宮殿の周りにも基本的には中世フランスを模した街を作っているが、エトワール凱旋門があったりと、時代が微妙に食い違う建造物もある。



「フランスだ!」

「駅までそっくりですわね。」

さて一行が到着したのはパリ北駅だった。

空飛ぶ列車を降りた一行は、入国検査を経て駅にと足を踏み入れる。

いわゆる外来種の植物や生物の移動を自主的にハニワ兵達が制限してるらしく、そのような物が入らないようにしてるらしい。

街の景色は現在過去未来が、入り交じったフランスという感じだ。

景観はフランスであるが、空飛ぶ車やバスが街を走っているので未来のようであるし、現代の物も至るところにある。

ただやはりハニワ兵の街なので住人はハニワ兵達であったが。


「凄いわね。」

「うん!」

少女達の反応は、本物のパリに行ったことがあるメンバーと無いメンバーで違う。

意外に細かいところまで拘り再現してるのだが、住人がハニワ兵な為か、どっか違うと感じる部分もある。

一行は駅前からベルサイユ宮殿行きのバスに乗ると、同じく観光客らしきハニワ兵達と共に市内を見物しながらベルサイユ宮殿へと向かう。


「よくまあ、ここまで作ったなぁ。」

ちなみに横島自身はフランスに行った経験がないので、何処が再現されて何処を変えたのか、あまり分かって無かったが。


「すげえ! 貸衣装もある!」

「それはハニワさん用では?」

「ポー!」

バスが市内を抜けて目的地のベルサイユ宮殿に到着すると、そこは多くの観光客のハニワ兵達で賑わっていた。

中には観光客相手に記念写真を撮影してるハニワ兵や、貸衣装を提供してるハニワ兵達が居て、何人かの少女達は貸衣装に食い付く。

流石に人用の貸衣装はないだろうと冷静に考えれば思うが、貸衣装屋さんのハニワ兵はニヤリと自信ありげな笑みを見せて、人用の貸衣装を並べた。


「うわぁ!」

「なぜ人用の貸衣装が?」

異空間アジトに入れる人は横島と特に親しい人しかいない。

何故貸衣装があるのかと夕映などは首を傾げるも、それはお花見の時に遡る。

本来は人が来ることを想定してない場所に、横島達が突然やって来ることを学んだハニワ兵達は、各所に通達を出して横島や少女達が突然来てもいいように準備することにしたらしい。


「タマちゃん、どれがいい?」

「わたしこれ!」

結果としてせっかく用意してくれたのだからと積極的に貸衣装を借りようとする少女達の意見により、一行は着替えることにする。

刀子は流石に少し抵抗感があるらしいが、他の少女達は麻帆良祭でコスプレをしたりするので抵抗感はないらしい。

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