二年目の春・7

麻帆良第一野球場は学園の施設であったが、プロ野球の開催出来る本格的な球場でありプロの一軍と二軍の試合から社会人野球に学生や草野球まで幅広く使われている球場になる。

観客収容人数も三万五千人ほどとかなり大きく球場周辺が運動公園となっているので、プロ野球公式戦のあるこの日は屋台が出るほどの賑わいとなっていて当然のように超包子の屋台が出ていたりするが。


「野球観戦なんて初めてやわ。」

「俺は小さい頃何度か親父に連れられて行ったなぁ。」

試合は在京の人気球団がホームで関西の人気球団を迎えるというプロ野球でも屈指の人気カードなだけに球場の外にも多くの野球ファンが集まっている。

あまり野球に馴染みのない少女達はほとんどが初めての野球観戦らしく、横島は父親の大樹に連れられて子供の頃に来た以来らしい。

観客に未成年の学生が多いのが麻帆良での野球開催の特徴であり横島達のチケットは外野の自由席なので球場に入り外野に向かうと、そこは芝生になっていてある程度の席の区分けはあるものの椅子はなく自由に座れるようになっていた。


「うわ、混んでるわね。」

「座る場所あんまりないじゃん。」

ただ外野の芝生席にはすでにかなりの人が居て空いてる場所はあるものの大人数の横島達一行が座れそうな場所は見当たらない。


「おう! 夕映ちゃんとのどかちゃん!」

「こりゃまた大人数だな。」

「おい、ちょっと空けてやろうぜ。」

少し来るのが遅かったかとバラバラに座るか悩む一行であるが、外野の芝生席には大学生達がかなり居て有名人である横島達が来ると騒ぎ始めたが彼らが自主的に移動をしたり詰めたりして横島達が一緒に座れる場所を開けてくれた。


「わざわざ、ありがとうございます。」

「先輩ありがとう!」

相変わらず綺麗どころと可愛い子を連れてる横島には羨望と嫉妬の視線が集まるが、席を開けてくれた大学生達に少女達がお礼を言ったりして会話が進むと大学生達も満更でもないようで一緒になりおしゃべりをしながら試合が始まるのを待つことになる。


「マスター、さあ飲んで飲んで。」

「いいんっすか?」

なお横島に関してだが座ると早々に大学生達にビールを勧められて乾杯して飲み始めてしまう。

またかと若干呆れる少女達ではあるが、彼女達もまた大学生達が持ち込んだつまみやお菓子に料理など進められると食べながらの観戦となる。

正直野球をよく知らぬ少女達にとってはこうした宴会の方が楽しいのかもしれないが、試合が始まると外野席にいる球団の応援団などの人達が楽器を鳴らして応援を始めるのでなかなか普段では味わえない雰囲気での野球観戦になっていた。

何より野球ということで大学生達は圧倒的に男が多く、華がある少女達やアナスタシアは歓迎されているのだ。


「噂のマスターの元カノって本当に美人だ。」

「こら抜け駆けすんな!」

そしてこの日の唯一の大人の女性であるアナスタシアだが、その美貌から大学生達を虜にしてしまいお酒を手渡したり料理を勧めるなど何人かはお近づきになろうとして大学生達の間で騒ぎになる。

無論少女達も決して見た目は負けてないが木乃香や夕映やのどかは大学部に極秘の見守り隊が居るので下手に声をかけると大変なことになるし、流石に中学生を口説くのは少し勇気がいる。

だがアナスタシアは大人であり横島とも元カノと言われてるだけに現状は付き合ってないのではと見られていたので、あわよくば仲良くなりたいと考えた単純な大学生が何人かいるらしかった。



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